超越
超越（ちょうえつ）
超越とは、ある存在が物理的な現象や法則をはるかに超えた、高い次元にあることを指す概念です。この言葉は、特に西洋の哲学や神学で特有の意味を持ち、一般的には感知可能で常に変化する物理現象界と対照的な存在を表現する際に用いられます。
概念の理解
超越は、常に物理現象界との対比を通じて語られます。この物理現象界を「内在」と称し、それに対する対義語として超越が成り立ちます。超越的存在はしばしば神々やそれに類する非人格的な抽象存在として理解されることがあります。神の概念は論者によって異なるが、一般には世界の根源や原因と結びつけて考えられます。また、超越の性質については、人間の理解を超えているとされることが多く、それ故に捉えがたい存在として扱われます。
こうした概念に留まると、ただの不可知論や懐疑論に陥る可能性があり、超越的存在との関係を深める意欲を失う危険もあります。実際の宗教や哲学の領域では、秘儀や信仰、瞑想、弁証術などの実践的手法を通じて、根源的存在に接触できる道を示唆することが多いです。たとえば、プラトンの「魂論」やウパニシャッドの「アートマン・梵我一如思想」、大乗仏教の「仏性・如来蔵思想」では、人間の内面に超越的存在との結びつきを見出し、それを探求することで実現できると説かれています。
このように、超越は単なる理論ではなく、私たちの存在の本質に関わる深い問いかけを内包しています。特にプラトン以降は、超越的な存在と内在的なイデアを峻別する厳密な思考が進化し、超越かつ内在的という折衷的な視点が登場します。
歴史的背景
古代
古代ギリシアでは、超越の概念が確立される以前から、人間や動物と神々との対比を通じて神々の特性が強調されていました。特に、パルメニデスが「本質存在」という概念を提唱したことで、世界の恒常性が支持されました。プラトンはこの思想を受け継ぎ、本質存在を「善のイデア」や「創造主デミウルゴス」に置き換え、物理現象とイデアの間に「イデア界」を位置づけました。アリストテレスは自然学的観点から諸存在を「形相」と「質料」の結合として捉え、超越については言及を控えました。
中世
中世には、古代ギリシアの思想がキリスト教に吸収され、神学の中で超越的な神という概念が発展しました。神は現実世界の外に存在し、他者の意識から独立して存在すると考えられました。このため、内在という対義語が生じました。
近代
近代において、カントはプラトンの思想を再構築し、感性的な直感の対象を超える概念として「超越」を定義しました。彼は、「物自体」や「ヌーメノン」という用語を使い、経験可能な世界を越えた実践理性の対象を識別しました。また、ヤスパースは、現存在から実存へ飛躍する過程を重視し、哲学が超越することそのものだと述べました。
関連項目
参考文献
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