越境汚染

越境汚染（えっきょうおせん）

越境汚染は、汚染物質が大気や河川を通じて発生源から離れた地域に達し、その地域を汚染する現象を指します。この用語は、特に他の地域に悪影響を与える公害に関連して使われることが多く、もらい公害とも呼ばれることがあります。

代表的な例

越境汚染の代表的な例としては酸性雨が挙げられます。この現象は、工場や発電所から排出される硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中で化学反応を起こし、雨として降下することで発生します。酸性雨は特定の地域にとどまらず広範囲にわたり影響を与え、土壌や水質、さらには生態系にも悪影響を及ぼすことになります。

日本の越境汚染

日本国内での越境汚染の事例としては、高度経済成長期に発生したスモッグ公害があります。この時期の工場からの排出物が近隣の市町村に悪影響を及ぼし、住民の健康を脅かす問題となりました。

現代においても越境汚染は依然として存在し、県をまたがる影響が大気汚染のモニタリングにおいて大きな課題となっています。最近の傾向としては、中国からの越境汚染は減少している一方で、国内の発生源による汚染が相対的に増加しています。

国外の越境汚染

日本は偏西風の影響を受けやすく、中国や韓国など東アジア諸国からの越境汚染にさらされやすい地理的な位置にあります。2007年には西日本で広範囲に光化学スモッグ注意報が出され、その原因に韓国や中国からの大気汚染物質が挙げられました。福岡工業大学の研究によると、中国の石炭火力発電所からの水銀が日本に越境汚染を引き起こしていることが確認されています。

また、東アジア全体では、2001年から設立された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク（EANET）が運営され、地域の環境問題に対する監視と対策が進められています。

東南アジアや欧米の状況

東南アジアでは、森林火災などによるヘイズと呼ばれる越境汚染が深刻な問題となっています。この地域では特定の季節に、煙霧が国境を越えて広がり、人々の健康に影響を及ぼします。

欧米では、工業の発達に伴って、イギリスやドイツなどの工業地域から排出される煙が酸性雨の原因となり、これが森林などに悪影響を及ぼす事例が見られます。また、アメリカとカナダの間では、越境汚染に関する国際的な紛争として「トレイル溶鉱所事件」が発生しました。

これらの問題を踏まえ、多くの国が「長距離越境大気汚染条約」を発効させ、国際的な協力に基づく対策が求められています。

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