足立正

足立正

足立正（あだち ただし、1883年2月28日 - 1973年3月29日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の実業家、財界人です。正三位勲一等旭日大綬章を受章。号は立堂。

生涯

生い立ちと学歴

1883年（明治16年）、鳥取県境町（現・境港市）に生まれました。父は境郵便局長を務めた足立繁太郎です。旧制松江中学校（現・島根県立松江北高等学校）を経て、東京高等商業学校（現一橋大学）に進学。外交官を志しましたが、家庭の事情で断念し、1905年（明治38年）に卒業しました。

実業界での活躍

卒業後、三井物産に入社。当時台北支店長であった藤原銀次郎との縁で台北に赴任します。その後、藤原が王子製紙に移ると、足立もこれに従い、同社へ。1917年（大正6年）には苫小牧工場長、1920年（大正9年）には取締役に就任し、王子製紙の発展に貢献しました。1942年（昭和17年）には社長に就任し、戦時下の会社経営を担いました。

戦後の活動

1951年（昭和26年）、ラジオ東京（現TBS）の創立に際し、初代社長に就任。日本民間放送連盟の初代会長も務め、民間放送の発展に尽力しました。1956年（昭和31年）には日本生産性本部会長、1957年（昭和32年）には日本商工会議所会頭、東京商工会議所会頭を歴任するなど、財界の重鎮として幅広く活躍しました。また、日韓国交正常化にも尽力し、早稲田大学より名誉博士号を授与されました。

人物像

足立は、温厚で人望が厚く、多くの人々に慕われたといいます。趣味は乗馬、庭球、囲碁、将棋など多彩で、宗教は曹洞宗でした。また、その容貌が哲学者である安倍能成に似ていたとされています。

学生時代のエピソード

足立は、東京高等商業学校への入学を「中学での成績が特別よかったわけではなかったが、松江から東京高商を志望した者の中でトップだったため無試験入学となった」と回想しています。当時の東京高等商業学校には、菅礼之助（元東京電力会長）や内田信也（政治家）らが同級生でした。

交流関係

藤原銀次郎とは、生家が隣同士という縁で親しく、藤原の結婚も足立の父・繁太郎の仲介によるものでした。足立は「私の履歴書」の中で、藤原が妻の身元調査に来た際に父が尽力したことや、結婚後も藤原が頻繁に家に遊びに来ていたことを語っています。

家族・親族

足立家は、江戸時代に大庄屋を務めた豪家で、足立正の祖父は馬術の達人でした。父も馬術や剣道に優れ、足立自身も幼少の頃から武芸を習っていました。二男の龍雄は王子製紙に入り、後に中村屋の社長・会長を務めました。また、姻戚には元古河鉱業取締役の飯島純介、法学博士の山崎覚次郎、元鴨川化工会長の吉家敬三などがいます。

評価

鈴木幸夫の著書によると、足立は王子製紙の発展に貢献し、財界の世話役として知られていました。また、親台湾ロビーの有力者として、対国府親善に尽力したとされています。

その他

足立は、鳥取県境町、北海道苫小牧市、東京都麻布区などに居住しました。

脚注

[参考文献]
鈴木幸夫『閨閥 結婚で固められる日本の支配者集団』光文社、1965年
鳥取県教育委員会『鳥取県郷土が誇る人物誌』、1990年
『私の履歴書─昭和の経営者群像 <6>足立正 - 苦境の王子製紙に飛び込む』日本経済新聞社、1992年
佐藤朝泰『豪閥 地方豪族のネットワーク』立風書房、2001年
『日本産業人名資料事典 第3巻』、2001年

[関連項目]
雑賀愛造
手島栄
藤山愛一郎
諸井貫一
正力松太郎
藤原銀次郎
足立氏
旧足立家別邸主屋
鳥取県出身の人物一覧
一橋大学の人物一覧
竹内村
王子ホールディングス
TBSホールディングス
山陰放送

[外部リンク]
とっとりデジタルコレクション--足立正
* 日本財団図書館(電子図書館)　全施協50周年記念誌 - 足立正の肖像

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