軍団 (古代日本)

軍団（ぐんだん）とは

軍団とは、7世紀末（もしくは8世紀初め）から11世紀までの日本において、律令制に基づき設置された国家規模の軍事組織を指します。この制度は、中央政府が人民から兵士を徴兵し、大規模な歩兵戦を想定した軍隊を組織することを目的としていました。全国各地に駐屯地が設けられ、各軍団は所在地の名前に「軍団」または「団」を付けて呼ばれていました。

軍団設立の背景

軍団が設立された背景には、唐の制度に倣った国家体制の整備、国外からの侵略に備える軍事力の強化、新羅を服属させるという政治的な目的、そして蝦夷征討といった複数の要因がありました。当時の日本は、唐や新羅に対抗し得る軍事力を持つことを目指しており、その方針は古墳時代から続くものでした。

軍団の成立

軍団制度は、大宝元年（701年）に制定された大宝律令に規定されていますが、実際にいつ成立したかについては諸説あります。有力な説としては、持統天皇3年（689年）の飛鳥浄御原令によるものとする説が挙げられます。それ以前の軍隊は、豪族が従者や隷下の人民を武装させた国造軍であり、軍団とは異なり、国家が兵士を徴兵し、軍事組織を維持するという点が特徴です。徴兵制を可能にするためには、戸籍を作成し、人民を把握する必要がありました。戸籍の始まりは天智天皇9年（670年）の庚午年籍ですが、不十分であったため、持統天皇4年（690年）の庚寅年籍とする説もあります。

軍団の歴史

軍団は、国家が兵士を徴兵し、軍事組織を維持し、地方民政機構から分離した点が特徴です。平時には国司によって管理・維持され、駐屯地は全国に置かれました。しかし、8世紀末になると政治方針が転換し、軍団の維持は経済的な負担とみなされるようになりました。その結果、延暦11年（792年）には陸奥国・出羽国・佐渡国・西海道諸国を除く地域で軍団は廃止され、代わりに健児制が導入されました。その後、826年には佐渡国・西海道諸国の軍団も廃止され、軍事力の主体は地方行政機関（国衙・受領）へと移行していきました。

軍団兵士の徴兵と負担

養老律令の軍防令では、正丁（21歳から60歳までの健康な男性）3人につき1人が兵士として徴兵されることになっていましたが、実際にはそれよりも少ない人数だったようです。兵士は食糧や武器を自弁し、交代で軍団に上番して訓練や警備にあたりました。また、衛士として都に派遣されたり、防人や鎮兵として遠隔地に派遣されたりする者もいました。これらの負担は非常に大きく、死亡や逃亡する者も少なくありませんでした。

軍団の規模と組織

標準的な軍団の定員は1000人でしたが、規模や編成は国によって異なり、小規模な軍団では100人単位で編成されることもありました。軍団の指揮系統は、大毅、小毅、主帳などの役職があり、その下に校尉、旅帥、隊正などが兵士を統率しました。戦時には、将軍が指揮の頂点に立ちました。軍団の規模によって指揮官の構成も異なり、大団（1000人）では大毅1名と少毅2名、中団（600人以上）では大毅1名と少毅1名、小団（500人以下）では毅1名が率いました。

軍団の装備

軍団兵士は、弓、矢、太刀、小刀などの個人装備を自弁する必要があり、食糧や塩も自弁でした。また、火ごとに幕や釜、鍬などの装備を用意し、隊ごとに火打石などの装備が支給されました。軍団には鼓や角、弩などの装備が支給されましたが、甲冑は高価で生産量も少なかったため、軍団の標準装備には含まれていませんでした。ただし、大規模な遠征の際には、指揮官の請求に応じて別途支給されることもありました。

軍団の配置

軍団は、原則として一つの国に最低一つ、大きな国には複数置かれました。軍団の指揮官は郡司層から選ばれ、駐屯地は国府所在郡の郡家近くや、その他の郡家の近くに設けられました。陸奥国、出羽国、出雲国など、いくつかの国では軍団名と所在地が判明していますが、それ以外の国では一部のみが判明しています。

軍団の廃止とその後

延暦11年（792年）に軍団が廃止されたことにより、朝廷は国家的な軍事力を失いました。その結果、各地で治安が悪化し、有力な農民は自衛のために武装し、武士へと成長していったとされています。朝廷は治安維持のため、検非違使を創設しました。

まとめ

軍団は、律令制下で日本の軍事力を支えた重要な組織でしたが、その維持には多大な費用と人民の負担が伴いました。軍団の廃止は、律令制の変革と武士の台頭を促す転換点となり、その後の日本の歴史に大きな影響を与えました。

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