軟口蓋側面接近音

軟口蓋側面接近音（なんこうがいそくめんせっきんおん）は、子音の分類における一つのタイプで、その発音は独特のメカニズムによって特徴づけられます。

発音のメカニズム

この音を発する際、舌の後ろの部分（後舌面）が口の上部にある軟口蓋に接触し、口の中央部を閉鎖します。しかし、舌の両脇は軟口蓋に触れず、ここから空気が抜けることで音が生成されます。この空気の流れ方が側面的なため、「側面音」と呼ばれます。

音響的な特徴

軟口蓋側面接近音は、以下の特徴を持ちます。

気流の起こし手: 肺から送り出される呼気を使用します。
発声: 発声時には声帯が振動するため、有声音として分類されます。
調音位置: 舌の後ろの部分（後舌）と口の奥にある軟口蓋が接近して音を作ります。これにより軟口蓋音として認識されます。
調音方法: 空気は舌の脇を通り抜けます。また、舌と軟口蓋の接近は、摩擦音を生じるほど強くはなく、接近音として特徴づけられます。
口蓋帆の位置: 口蓋帆は持ち上げられ、鼻腔への空気の流れを遮断し、口から音が放出されます。

国際音声記号（IPA）

軟口蓋側面接近音は、国際音声記号（IPA）では[ʟ]という記号で表されます。この記号は1989年に正式に定義されました。

言語における出現

軟口蓋側面接近音[ʟ]は、1970年代にパプアニューギニアのカニテ語に音素として存在することが報告され、音声学者の間で広く認識されるようになりました。現在では、カニテ語以外にもメルパ語、中部ワギ語、ヤガリア語などのパプアニューギニアの言語、チャド語派のコトコ語、セイリッシュ語族のコモックス語などにも[ʟ]の存在が確認されています。

言語例

中部ワギ語: aglagle [aʟaʟe] （目が回る）
メルパ語: [paʟa] （垣根）
カニテ語: [kaʟa] （犬）

アメリカ英語とスコットランド英語における考察

一部では、南部アメリカ英語やスコットランド英語において、音節末の「暗いL」と呼ばれる音が、この軟口蓋側面接近音[ʟ]の異音として現れるという説があります。しかし、音声学者のピーター・ラディフォギッドとイアン・マディソンは、このような現象を認めず、おそらく別の音の誤認ではないかと指摘しています。

まとめ

軟口蓋側面接近音は、その特異な発音メカニズムと、特定の地域や言語での出現が特徴的な子音です。音声学において、その正確な記述と分析は、言語音の研究に不可欠な要素となっています。

参考文献

International Phonetic Association (1999). Handbook of the International Phonetic Alphabet: A guide to the Use of the International Phonetic Alphabet. Cambridge University Press.
Ladefoged, Peter; Maddieson, Ian (1996). The Sounds of the World's Languages. Oxford: Wiley-Blackwell.

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