軽ボンネットバン

軽ボンネットバンの歴史と特徴

軽ボンネットバン、通称「軽ボンバン」は、1980年代に登場した軽自動車の一形態です。2ボックススタイルでハッチバックを備え、主に貨物自動車として分類されます。このスタイルは、その使い勝手の良さと低価格から特に低所得者層に支持されました。ただし、リアシートは荷室面積を確保するために下に倒せるタイプで、居住性には難があるとされています。

登場の背景

軽ボンネットバンは、1970年代に主に軽自動車市場が拡大した際に登場しました。この時期、特に郊外や地方でセカンドカーの需要が高まり、軽自動車メーカーはこれに対応する製品を展開しました。1979年、スズキが「アルト」を商用モデルとして発売し、これが軽ボンネットバンの最初のモデルとされています。

この「アルト」は、実用性と低コストを追求し、47万円という驚異的な価格で市場に登場しました。反響は甚大で、発売からわずか1ヶ月で1万8000台以上の注文を受けました。

軽ボンネットバンの人気の理由

軽ボンネットバンは、主にファーストカー以外にも家庭の2台目として使用されることが多く、物品税の非課税対象だったことから多くの支持を集めました。これは当時の軽乗用車に対しても優れた経済性を持たせる要素であり、結果として1980年代には大いに普及しました。この時期、ダイハツや三菱も軽ボンネットバンを市場に投入し、競争が加熱しました。

特に物品税が改定された1981年以降も、その競争は続きました。軽ボンネットバンは、ある程度の居住性を保ちながら、軽乗用車よりも遥かに安い入り口価格で提供され、支持を受け続けました。さらに、運転席はほぼ乗用車と変わらないスペースが確保されているため、実際の使用感はあまり不自由さが無かったのです。

衰退と市場変化

しかし、1990年代に突入すると状況は変わります。使い勝手の良さから来ていた軽ボンネットバンの需要が、トールワゴンやハイトワゴンといった新しいタイプの軽自動車にとって代わられ始めます。また、居住性の向上が求められた時代において、2ボックス型である軽ボンネットバンはその魅力を失っていきました。

2021年には、スズキがアルトバンの生産を終了しました。これは、軽ボンネットバン市場の完全なる消滅を意味します。既存の軽自動車カテゴリの中で、よりフレキシブルで効率的なモデルに消え去っていきました。

現在の用途

軽ボンネットバンは今や一般ユーザーにはあまり人気がありませんが、特定の用途—たとえば公共交通機関の便が悪い地域でのセカンドカーや、商業インフラが未発達な地域におけるパーソナルカー—として一定の需要を持たれています。そのため、企業による社用車としての利用は今でも行われています。

このように、軽ボンネットバンは1980年代にはまさに軽自動車の主流を担っていましたが、時代の流れには逆らえず、静かにその歴史に幕を閉じました。実用性が高い一方で、消費者の嗜好が多様化し、より快適な乗り心地を求めるニーズには応えられなくなっていたのです。

もう一度検索