輸出補助金

輸出補助金の概要

輸出補助金（ゆしゅつほじょきん、英: Export subsidy）は、企業が輸出を促進するために受け取る補助金であり、これにより輸出財の価格を抑え、売上の向上を図ることが可能となります。この補助金を通じて、政府は国内の生産を維持し、国際市場での競争力を強化することを目指しています。また、国際貿易機関（WTO）の規定により、特定の条件を満たす国々（特に後発開発途上国を除く）では、直接的な輸出補助金が禁止されています。

輸出補助金は、国の経済政策に深く関連しており、国内市場を保護するために高い価格を維持する手段として利用されることがあります。特に、関税などの輸入制限を通じて、国外からの安価な輸入品に対抗する形で国内価格の保護が行われることもあります。2015年12月にはケニアのナイロビで開催されたWTOの第10回閣僚会議において、農産物に関する輸出補助金を撤廃する合意がなされました。

中間財と減税制度

また、輸出財を生産する際に使われる中間財を輸入する際に課せられる関税を還付する制度も、実質的に輸出補助金と同等の効果を持ちます。例えば、アメリカでは、輸出企業は利子課税内国国際販売法人（IC-DISC）を通じて減税を受けることができます。このように、各国は異なる形で輸出補助を導入しており、それに伴う経済的影響は多様です。

相殺関税について

輸出補助金は、他国の輸入産業に悪影響を及ぼし、不公平な貿易を引き起こす可能性があるため、WTOのルールでは特に注意が必要です。もし輸出補助金が認められ、その影響により輸入国の産業が損害を被った場合、輸入国は相殺関税を課すことが許容されています。このような措置は、国際的な貿易における公平性を確保するための重要なメカニズムとされています。

経済分析の観点

寡占市場の場合

輸出補助金に関する経済分析は、特に寡占市場の状況下で行われます。ブランダー＝スペンサー・モデルに基づく分析によれば、航空産業のような特定の業界では、政府が戦略的に輸出補助金を提供することが経済全体にどのように影響するかを示す良い例です。この業界では国際的な競争が存在し、エアバスとボーイングが代表的な企業です。両社が相互に輸出補助金を出し合うことで、かえって利潤が減少するという過剰競争の現象が見られることがあります。

完全競争市場の場合

一方で、完全競争市場において輸出補助金がもたらす影響について部分均衡分析が行われると、たとえば小国が補助金を提供すると、国内市場での価格は上昇し、結果的に交易条件が悪化し、さらに国内の厚生が悪化することが明らかになります。このように、輸出補助金は自国の経済にとどまらず、国際的な影響を持つ複雑な政策であることが理解できます。常にその効果を見極め、適切に運用することが重要となるでしょう。

もう一度検索