辰巳晃一

辰巳 晃一（たつみ こういち）氏は、1964年10月5日に愛知県で誕生した、多岐にわたるパラスポーツ分野で活躍を見せたアスリートです。車いすバスケットボールの強豪チームを黎明期から支え、車いすマラソンでは世界のトップランナーと競い、パラリンピックにも出場しました。さらに、電動車いすサッカーの普及・発展にも貢献するなど、その活動は競技の枠を超えています。

車いすバスケットボールでのキャリア

1985年、名古屋市で産声を上げた車いすバスケットボールの有力チーム「ワールドバスケットボールクラブ WORLD BBC」の設立メンバーの一人として加わりました。フォワードとしてチームを牽引し、特に1999年から2002年にかけて、内閣総理大臣杯争奪日本車椅子バスケットボール選手権大会において前人未踏の4年連続優勝という偉業達成に貢献しました。また、個人としてもその活躍が評価され、2001年には同大会のベスト5に選ばれています。

車いすマラソンでの挑戦

1990年から、国内屈指の国際大会である大分国際車いすマラソン大会への参加を開始しました。名古屋金鯱レーシングチームの主要選手として、1992年から1999年シーズンにかけて、日本人トップ3の座を常に争う活躍を見せ、国内の車いすマラソン界をリードする存在でした。最大の栄誉は、1996年のアトランタパラリンピック出場です。この大会の車いすマラソン競技で9位という成績を残しました。同年には東京シティハーフマラソンで優勝しています。

競技者としての第一線からは既に退いていますが、現在も市民ランナーとしてランニング活動を続けています。

主なマラソン記録

大分国際車いすマラソン大会における主な記録は以下の通りです。

1992年：1時間43分32秒（日本人3位）
1994年：1時間43分11秒（日本人5位）
1995年：1時間30分55秒（日本人2位）
1996年：1時間35分08秒（日本人3位）
1997年：1時間32分26秒（日本人3位）
1999年：1時間32分41秒（日本人4位）

特に1995年の大会では、自身にとって記念碑的なレースとなりました。1位のハインツ・フライ選手（スイス）からは離されましたが、2位集団での熾烈な争いに加わりました。競技場に入った時点で集団となっており、表彰台の可能性も十分にありました。最終コーナーを回り、ラストスパートをかけようとしたその時、前方でハーフマラソンの選手がコースを横切るアクシデントに遭遇します。瞬時に減速し、コースを変更することを余儀なくされました。再びスパートを試みましたが、室塚一也選手やアンドレ・ヴィジェ選手にわずか体一つ分の差で競り負け、5位でのフィニッシュとなりました。

しかし、この時のタイム1時間30分55秒は、前年の優勝タイム（当時の大会最高記録）とわずか1秒差であり、また当時の日本記録であった室塚一也選手の記録（1時間39分09秒、1994年大分国際）を実に8分以上も更新する驚異的な記録でした。表彰台こそ逃しましたが、堂々たる日本人2位の成績であり、辰巳氏が国内トップレベルのアマチュアランナーであることを強く印象づけるレースとなりました。翌1996年の大分国際では、参加選手を代表して選手宣誓を務めています。

電動車いすサッカーへの貢献

辰巳氏は競技活動と並行して、新たなパラスポーツの普及にも尽力しました。1989年には、名古屋に日本で2番目となる電動車いすサッカーチームの発足に貢献しました。さらに、1995年に開催された「第1回電動車椅子サッカー全国大会 in 名古屋」の実現にも尽力するなど、国内における電動車いすサッカーの礎を築く上で重要な役割を果たしました。現在、日本電動車いすサッカー協会の終身名誉顧問を務めており、引き続き競技の発展を見守っています。

車いすバスケットボールでのタイトル獲得、車いすマラソンでの国際舞台での活躍、そして新たな競技の普及への貢献と、辰巳晃一氏はパラスポーツ界において多大な功績を残した人物と言えるでしょう。

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