辰馬考古資料館

公益財団法人辰馬考古資料館：考古学と美術の宝庫

兵庫県西宮市に位置する公益財団法人辰馬考古資料館は、考古学研究に重要な資料を数多く収蔵する人文科学系の博物館です。2023年12月より建替え工事に伴い休館中ですが、再開後はさらに充実した展示が期待されています。

辰馬家と考古学への貢献

当館は、辰馬本家の分家である北辰馬家の当主、三代辰馬悦蔵氏によって1976年に設立されました。悦蔵氏は京都帝国大学で学び、家業の酒造業のかたわら、考古学研究と考古資料の収集に情熱を注ぎました。特に、大阪湾沿岸で出土する銅鐸が散逸、あるいは海外に流出している現状を憂慮し、貴重な資料の保存を目的として、自ら収集活動に尽力されました。その結果、当館は質・量ともに日本有数の銅鐸コレクションを誇るようになりました。

貴重なコレクション

当館のコレクションは、考古資料と富岡鉄斎の絵画の二本柱から構成されています。考古資料は、縄文時代の土器や土偶、銅鐸、銅鏡など多岐に渡り、その中には国宝を含む21件の重要文化財が500点以上含まれています。特に銅鐸コレクションは、その規模と質において日本屈指と高く評価されています。

コレクションの形成には、他の個人コレクションの譲渡も重要な役割を果たしています。例えば、高島多米治氏のコレクションには、茨城県福田貝塚や椎塚貝塚、千葉県余山貝塚などから出土した貴重な土器や土偶が含まれ、これらは20世紀初頭に高島氏によって収集されたものです。また、工藤祐龍氏のコレクションには、青森県亀ヶ岡遺跡出土の注口土器（重要文化財）が含まれています。これらのコレクションは、悦蔵氏の尽力によって当館に収蔵されることとなりました。

一方、絵画コレクションの中心は、日本画家富岡鉄斎の作品です。悦蔵氏の祖父、悦叟氏が鉄斎と親交があったことから、数々の名画が受け継がれ、その中には国宝指定の『阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図』屏風一双も含まれています。

展示と活動

当館は常設展示を行っておらず、定期的に所蔵作品を入れ替えながら展示を行っています。これは、貴重な資料の保存状態を維持し、より多くの資料を公開するための方策です。また、兵庫県博物館協会、全国歴史民俗系博物館協議会に加盟し、博物館法に基づく兵庫県教育委員会登録博物館として、地域社会への貢献にも力を入れています。

アクセスと周辺情報

当館は、阪神香櫨園駅から徒歩2分、阪急神戸線夙川駅から徒歩10分という好立地にあります。周辺には夙川公園、カトリック夙川教会、菊池貝類館、西宮市大谷記念美術館などの文化施設も点在し、文化的な一日を過ごすのに最適な環境です。

休館と今後の展望

現在、建て替え工事のため休館中ですが、リニューアルオープン後は、より充実した展示空間と、最新の保存技術を導入した施設となることが期待されています。再開後、さらに多くの来館者にとって魅力的な博物館となることを期待しましょう。

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