近接航空支援

近接航空支援（Close Air Support, CAS）について

近接航空支援（CAS）は、火力支援を目的とした航空作戦の一環で、地上部隊に直接的な航空攻撃を提供することを指します。特に、敵部隊が味方のすぐ近くにいる状況で行われるため、この支援は非常に慎重に計画され、実施される必要があります。

CASの方法と指揮統制

アメリカ空軍では、航空攻撃任務を近接航空支援（CAS）と航空阻止（AI）に分類しています。CASは基本的に、地上部隊との非常に近い距離で行われる直接的な支援を指し、1991年の湾岸戦争以降は「火力調整線（FSCL）」の内側での航空攻撃が必要とされています。この領域では、地上指揮官によって航空攻撃が指定され、前線航空管制官（FAC）が統制を行います。また、NATOでは近接航空支援を含む攻勢航空支援（OAS）という広いカテゴリーが設定されています。

アメリカ空軍の航空任務命令（ATO）に基づく指揮統制も重要で、航空支援作戦センター（ASOC）が空地協同を確保する役割を果たします。特に厳格な統制を必要とするCASにおいては、末端攻撃統制官（TAC）が重要な任務を担っており、これによって攻撃の効果を最大化する工夫がなされています。さらに、航空の支援に必要な「エアマンシップ」を提供するために、時には地上で活動する航空兵も配置されます。近接航空支援のための資格として、統合末端攻撃統制官（JTAC）が設けられ、TAC要員はこれによって発展しています。

実施要領

近接航空支援の要請には、計画的なものと緊急なものの二種類があります。計画的なCASは、具体的な目標を常に把握して行われるため、誤爆のリスクが低くなります。一方、緊急で行われるCASでは地上のTAC要員が航空機の指揮官と連絡を取り、目標の位置や周囲の環境について詳細な情報を共有することが求められます。このような緊密な調整は、航空機に搭載された武器の使用においても重要です。たとえば、レーザー誘導兵器を使用する際は、目標指示装置が設置され、正確な目標への攻撃が可能になります。

歴史的背景

近接航空支援のコンセプトは、第一次世界大戦にさかのぼります。当時から対地攻撃が行われ始め、敵前線への爆撃が試みられました。戦間期には、イギリスやアメリカは対地支援を軽視し、専門部隊の設置がなかった一方で、ドイツやフランスは専用の部隊と装備を持ち、近接航空支援の手法を発展させました。

第二次世界大戦中においては、特にドイツ空軍のJu 87「シュトゥーカ」による近接航空支援が重要な役割を果たしました。連合国軍では1943年からのイタリア戦線を通じて、近接航空支援のためのシステムが構築され、アメリカ軍ではP-47やホーカー・タイフーンといった戦闘爆撃機が主要な役割を担いました。戦後、アメリカ空軍は対地支援の役割を一時的に放棄しましたが、朝鮮戦争と続くベトナム戦争を通じて、その重要性が再認識されるようになります。

近接航空支援を実践する中で、CAS専用機体の開発が進められ、アメリカ空軍におけるA-10攻撃機などが特色のあるシステムを持って登場しました。その後も近接航空支援の運用は進化を遂げ、現代の戦闘における重要な役割を果たしています。特に湾岸戦争においては、多数のCASが行われたと報告されているものの、その実態はAI的な作戦が多く含まれていたともされています。

CASの進化の歴史を通じて、その戦術的な重要性は変わらず、常に新しい技術や戦術と結びついているのです。今後も近接航空支援は、地上部隊との連携を深めながら、戦局に応じた支援を提供していくでしょう。

もう一度検索