近江鉄道多賀線

近江鉄道多賀線：多賀大社へのアクセスと地域を繋ぐ路線

近江鉄道多賀線は、滋賀県彦根市高宮駅を起点に、同県犬上郡多賀町にある多賀大社前駅に至る、全長2.5kmの鉄道路線です。近江鉄道が運営しており、多賀大社への参拝客輸送を主な目的としていますが、彦根市方面への通勤・通学路線としての役割も担っています。

歴史と変遷：軽便鉄道から現代へ

多賀線の歴史は古く、多賀軽便鉄道の免許を近江鉄道が無償で譲り受けて開業したことに始まります。多賀大社へのアクセスを容易にしたことで、近江鉄道の業績向上に大きく貢献しました。

1914年の開業当初は高宮駅、土田駅、多賀駅（現在の多賀大社前駅）の3駅のみでしたが、その後、1943年に土田駅が休止、1953年に廃止されました。

1960年代以降は、近隣の工場への貨物輸送が盛んに行われ、住友セメント多賀工場やキリンビール滋賀工場への引き込み線が敷設されました。高宮駅には貨物ヤードも設置され、セメントやビールの輸送に重要な役割を果たしていました。しかし、これらの工場の輸送需要の減少に伴い、1980年代には貨物輸送はすべて廃止されました。

1976年にはワンマン運転が開始され、効率的な運行体制が整えられました。1998年には多賀駅が多賀大社前駅に改称され、2008年にはスクリーン駅が開業しました。

2013年には、本線米原駅 - 高宮駅間とともに「彦根・多賀大社線」の愛称が付けられ、ブランドイメージの向上に繋がりました。同年には車両限界拡張工事が完了し、それまで使用車両が限定されていた状況が解消されました。

2022年には脱線事故が発生しましたが、幸いにも大きな被害には繋がりませんでした。現在、2024年度には滋賀県と近江鉄道沿線の地方公共団体が鉄道設備を保有する公有民営方式への移行が予定されています。

路線データと運行形態

多賀線は、全線単線で電化されており、直流1500Vの電圧が使用されています。最高速度は70km/hです。自動閉塞式を採用し、安全な運行に配慮されています。

運行形態はワンマン運転が基本となっており、線内折り返し運転のほか、本線である彦根駅や米原駅まで直通運転する列車も運行されています。

多賀線と地域社会

多賀線は、多賀大社へのアクセス向上だけでなく、地域住民の通勤・通学にも貢献しています。近年は観光客の増加に伴い、その役割はますます重要性を増しています。

歴史と変遷を辿りながら、多賀線が地域社会に深く根付いた存在であることがわかります。今後の公有民営方式への移行も踏まえ、多賀線が地域社会の活性化に貢献していくことが期待されます。

参考文献

『週刊歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 29 近江鉄道/信楽高原鐡道/伊賀鉄道/養老鉄道』朝日新聞出版、2011年10月9日
寺田裕一『改訂新版 データブック日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2013年1月19日

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