近衛宰子

近衛宰子（このえ さいし）

近衛宰子は、鎌倉時代中期の公家女性です。摂関家である近衛兼経の娘として生まれ、鎌倉幕府6代将軍である宗尊親王の正室となりました。彼女の生涯は、当時の政治情勢に翻弄され、数奇な運命をたどります。

生涯

文応元年（1260年）、20歳で鎌倉へ下向し、宗尊親王の正室となります。この婚姻は、幕府執権である北条時頼の猶子となることで実現しました。通常、猶子は身分の低い者が高い者に対して行うものですが、摂関家の女性が北条得宗家の猶子となるのは異例なことでした。これは、北条氏が将軍家との関係を強化するための策略だったと考えられています。

文永元年（1264年）には、後の7代将軍となる惟康親王を出産します。しかし、文永3年（1266年）に宗尊親王が解任され、京へ送還されるという事件が起こります。この事件には、宰子も深く関わっていたとされています。

事件の発端は、宗尊親王の内々の使者が京から戻った際に、後嵯峨上皇から宗尊親王への諷諫が伝えられたことでした。その内容は宰子に関わるものだったとされています。その後、幕府内で「深秘の御沙汰」が行われ、宰子の出産時に験者を務めた僧侶が失踪するなど、不穏な動きが相次ぎます。そして、宰子と娘は突如として時宗邸に移され、宗尊親王は京へ送還されることになったのです。

宗尊親王解任の真相は定かではありませんが、宰子と僧侶の密通が疑われ、宗尊親王に謀反の疑いがかけられたという説があります。また、宗尊親王が宰子を離縁しようとしたことが、後嵯峨上皇や幕府の反感を買い、孤立を深めたという見方もあります。

文永4年（1267年）には出家し、その後、越前国坂北庄を幕府に召し上げられたという噂も流れました。娘の掄子女王は、後宇多天皇の側室となり、禖子内親王を産んでいます。

近衛宰子の生涯は、鎌倉時代の権力闘争に巻き込まれ、翻弄された女性の悲劇を象徴していると言えるでしょう。

近年の関連作品

* 北条時宗（2001年・NHK大河ドラマ） - 川原亜矢子が演じた。

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