宗尊親王

宗尊親王：鎌倉幕府初の皇族将軍、その生涯と文化

宗尊親王（むねたかしんのう）は、鎌倉幕府6代将軍として、皇族でありながら征夷大将軍の地位に就いた人物です。後嵯峨天皇の第一皇子として生まれ、その波乱に満ちた生涯は、鎌倉幕府と朝廷の関係、そして北条氏による幕府の実権掌握という時代背景の中で繰り広げられました。

生涯

建長4年（1252年）、11歳で鎌倉に迎えられた宗尊親王は、異母弟である後深草天皇から征夷大将軍の宣下を受けました。これは、5代将軍藤原頼嗣が京に送還された後の出来事でした。

親王は後嵯峨天皇の寵愛を受け、承明門院の下で育てられました。寛元2年（1244年）には親王宣下を受け、同5年（1247年）には式乾門院の猶子となります。さらに翌年には室町院とも猶子関係を結び、寛元7年（1249年）には式乾門院から膨大な荘園群を未来の領主として指定されました。後嵯峨天皇は宣陽門院にも親王を猶子として長講堂領を譲るように求めましたが、これは拒否されています。

しかし、母方の身分が低かったため、皇位継承の望みは絶望的でした。そのため、後嵯峨天皇は親王の将来を案じていました。当時の京都では、後嵯峨天皇の即位を認めない順徳上皇系の人々の動きがあり、それに対抗するためにも複数の親王が必要とされていたという説もあります。

一方、執権北条時頼は、将軍家と摂関家の両方を支配する九条道家による幕府政治への介入に危機感を抱いており、九条家を政界から排除したいと考えていました。天皇と時頼の思惑が一致した結果、「皇族将軍」が誕生することになったのです。宗尊親王が鎌倉に下る際には、近衛左中将藤原隆茂、式乾門院蔵人重房、左近大夫石川新兵衛源宗忠の3人の近侍が随行しました。

当時の幕府は既に北条氏による専制体制を確立しており、将軍には実質的な権限はありませんでした。そのため、親王は和歌の創作に打ち込むようになり、歌会を頻繁に開催しました。その結果、鎌倉における武家を中心とする歌壇が隆盛を極め、後藤基政や島津忠景ら御家人出身の有能な歌人が輩出されました。鎌倉歌壇は『続古今集』の撰者の人選にも影響を及ぼし、親王自身も同集の最多入選歌人となっています。代表的な歌集には『柳葉和歌集』、『瓊玉和歌集』、『初心愚草』があります。

弘長3年（1263年）には、宗尊親王が征夷大将軍として上洛することが発表されましたが、御家人の経済的負担の大きさなどを理由に中止されました。さらに、前執権北条時頼の健康悪化や、土御門顕方による政変計画が発覚したためだとする説もあります。

文永2年（1265年）には一品[[親王]]に叙され、中務卿に任命されました。これは、後深草上皇・亀山天皇と共に後嵯峨上皇を支える皇族として認識されていたことの反映とみられています。

文永3年（1266年）3月、宗尊親王の内々の使者として藤原親家が上洛。6月5日、親家が京から戻り、後嵯峨上皇から宗尊へ正室近衛宰子に関する内々の諷諫を伝えています。その後、幕府の使者として諏訪盛経が上洛し、北条政村らによる「深秘の御沙汰」が行われ、宗尊親王は将軍を解任され京へ送還されることとなりました。その詳しい事情は不明ですが、宰子と良基の密通事件を口実に宗尊親王に謀叛の嫌疑がかけられたとする見方や、宗尊親王が宰子を離縁するような強硬な措置を取ろうとしたことが原因とする推測があります。

宗尊親王は京へ送還された後、両親から義絶を宣言されますが、幕府の取り成しにより和解しました。文永4年（1267年）には宰子が出家し、文永7年（1270年）には宗尊の妻妾である堀川具教の娘が次男早田宮真覚を出産しています。文永9年（1272年）には出家し、法名を覚恵または行証と名乗りました。文永11年（1274年）に33歳で死去しました。

宗尊親王の真跡

宗尊親王の真跡とされるものには、有栖川切、催馬楽切、古今集切、神楽歌切などがあります。しかし、その多くは親王が愛玩した平安時代の名筆であり、真跡であるか不明なものも多いとされています。しかし、名筆家としての評価は揺るぎません。

官歴

寛元2年（1244年）1月28日：立親王
建長4年（1252年）1月8日：元服。三品に叙せらる。4月1日：征夷大将軍宣下
文永2年（1265年）9月17日：一品に昇叙し、中務卿に任官
文永3年（1266年）7月20日：征夷大将軍辞職

宗尊親王は、鎌倉幕府初の皇族将軍として、その短い生涯の中で和歌や文化の発展に貢献しました。しかし、政治的な実権は握れず、北条氏の傀儡としての側面も否めません。彼の生涯は、鎌倉幕府の権力構造と、朝廷との複雑な関係を示すものとして、歴史に刻まれています。

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