近鉄1000系電車

近鉄1000系電車：時代を駆け抜けた通勤車両

近鉄1000系電車は、近畿日本鉄道（近鉄）が保有する通勤形電車です。そのユニークな経緯と変遷を辿ります。

誕生の背景

1959年末の伊勢湾台風からの復旧と改軌工事後、名古屋線では20m級4扉のWNドライブ車である1600系、1800系・1810系が導入され、輸送の近代化が進みました。一方、急行用には2600系が投入されましたが、2200系などの旧型車も運用されていました。

2200系は当時車齢40年に達し、車体の老朽化が目立っていましたが、主電動機はまだ使用可能でした。そこで、この電動機を再利用し、最新の1810系と同等の車体と組み合わせた車両を製作することになり、1000系が誕生しました。1972年から1973年にかけて20両が製造されました。

編成

当初はラインデリア装備の1000系と、新造冷房車の1200系（初代）の2系列で構成されていました。1200系は「冷房を装備した吊り掛け駆動の通勤車」として珍しい存在でしたが、後に1000系の冷房化改造に伴い、1200系は1000系に編入されました。

新造時編成

1972年7月24日竣工
1000系: モ1001・モ1002 + サ1151 + モ1051 + ク1101・ク1102
1200系: モ1201 + サ1351 + モ1251 + ク1301
1973年9月7日竣工
1000系: モ1003 - モ1007 + ク1103 - ク1107

車体と主要機器

車体は1810系・2410系の設計を踏襲した20m級4扉車体です。1000系はラインデリア、1200系は冷房装置を搭載していました。1200系の冷房装置は、1両あたり5基の三菱電機CU-14を搭載し、屋根の形状が1000系と異なっていました。

主要機器は、廃車車両からの流用品を活用した吊り掛け駆動方式を採用していました。しかし、WNドライブ車との共通運用を考慮した設計となっており、将来の改造を見据えていました。

主電動機: 2200系用三菱電機MB-211BFを改修したMB-211BFR2
主制御器: 三菱電機ABFM、日立製作所NMC、MMC-HT10Dなど
ブレーキ: HSC電磁直通ブレーキ
台車: 近畿車輛製KD-75A・KD-75、KD-32G・KD-32F
集電装置: 菱枠パンタグラフ

改造

冷房化と方向幕設置

1980年から1982年にかけて冷房化が行われ、CU-19が1両あたり4台設置されました。同時に、車体前面に方向幕が設置されました。これにより、旧1200系との差異がなくなり、1000系に編入されました。

高性能化と組成変更

1984年から1986年にかけて、駆動方式をWNドライブ、制御方式を界磁位相制御に変更する高性能化が行われました。主電動機はMB-3020E、主制御器は日立製作所MMC-HTR-20が採用されました。この際、編成の組成変更も行われ、4両編成と3両編成が登場しました。

車体更新

1991年から1994年にかけて、全編成に車体の内外装材交換を中心とする車体更新が行われました。1996年から1997年にかけては、一部車両に2回目の車体更新（B更新）が行われました。

運用

名古屋線の準急・普通を中心に、山田線・鳥羽線でも運用されていました。かつては大阪線や湯の山線、鈴鹿線でも運用されていました。また、吊り掛け駆動時代でも、高性能車との併結運転が行われていました。

廃車

2004年から2022年にかけて、多くの編成が廃車となりました。最後まで残った編成は明星検車区に配置され、名古屋線における最古参系列として活躍しました。

参考文献

三好好三『近鉄電車 大軌デボ1形から「しまかぜ」「青の交響曲」まで100年余りの電車のすべて』（JTBキャンブックス）、JTBパブリッシング、2016年。
飯島厳・藤井信夫・井上広和『復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道II 通勤車他』ネコ・パブリッシング、2002年。
諸河久・山辺誠『日本の私鉄 近鉄2』（カラーブックス）、保育社、1998年。

外部リンク

鉄路の名優 1000系 - 近鉄公式サイト

近鉄1000系電車は、時代の変化に対応しながら、長年にわたり近鉄の輸送を支えてきた車両です。その歴史と特徴は、鉄道ファンにとって興味深いものと言えるでしょう。

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