近鉄26000系電車

近鉄26000系電車「さくらライナー」

近鉄26000系電車は、近畿日本鉄道が運行する特急形車両で、「さくらライナー」の愛称で親しまれています。主に大阪阿部野橋駅と吉野駅を結ぶ吉野特急として活躍しています。

概要

1965年から運行を開始した吉野特急は、1990年に25周年を迎えました。これを記念し、より高品質な輸送サービスを提供するために開発されたのが26000系です。21000系「アーバンライナー」のデザインを踏襲しつつ、沿線の景観に合わせた観光的な要素が盛り込まれています。1990年3月15日のダイヤ改正から営業運転を開始しました。

26000系は、車両構造や技術面において過渡期の車両であり、新旧の要素が混在しています。斬新な装備が採用される一方で、抵抗制御方式やシュリーレン式台車、折戸式の乗降扉など、特急車両としては最後の採用となった装備も多く存在します。しかし、それまで旧式の回転式クロスシートが使用されていた吉野特急において、26000系の登場はサービスの質を大きく向上させました。1990年にはグッドデザイン賞を受賞しています。

本系列充当の特急列車には、近鉄時刻表などで「SL」をデザイン化したロゴタイプが表示されています。これは南大阪線の特急車として初めて公式の愛称が付けられたことを示しています。電算記号も「Sakura Liner」に由来する「SL」です。

開発の経緯

開発体制は21000系と同様で、1988年秋から開発がスタートしました。メンバーには、21000系に引き続き手銭正道と山内陸平が参加しました。

南大阪線・吉野線沿線には、古墳や飛鳥、吉野といった歴史的な名所・旧跡が豊富に存在します。また、吉野山の千本桜や吉野杉など、豊かな自然にも恵まれています。これらの沿線の特徴を設計に反映させるため、「日本の伝統的美意識の車両展開」「乗ること自体を楽しめる車両」というデザインポリシーが掲げられました。また、「さわやかデザイン」「くつろぎ車内」「ラウンド展望」の3つをコンセプトに開発が進められました。

26000系は観光列車としての側面を持ちながらも、通勤輸送のニーズにも対応できる設計となっています。

構造

車体断面などの主要な仕様は21000系に準じていますが、車体幅は標準軌系特急車と同様の2,800mmに拡大されています。前面は21000系と同様の流線型ですが、傾斜角は緩やかになり、スピード感を抑えた形状となっています。前照灯は角型シールドビーム4灯式で、以降の特急車にも採用されました。側窓は外付け式連続窓で、21000系よりも上下に拡大され、眺望性が向上しています。

乗降扉は近鉄特急伝統の折戸式ですが、26000系が最後の採用となりました。モ26300形は2箇所、その他は1箇所に設置されています。モ26200形の業務用ドアはプラグドアとなっており、気密性に優れ、車体外板と平滑になるなど、エクステリアデザインに貢献しています。

車体塗装は「日本的美しさの表現」をテーマに、クリスタルホワイトを基調とし、窓周りをうすずみ色で「雲海に煙る吉野山」をイメージ。車体裾部には、もえぎ色のグラデーションラインが引かれ、沿線の環境との調和が図られています。車体には「さくらライナー」の略称「SL」をデザインしたロゴが配置されています。

機器類

主電動機は三菱電機製MB-3308-Aを各車に4基搭載。主制御器は日立製作所製MMC-HTB-20U電動カム軸式抵抗制御器を搭載しています。制動装置はHSC-D発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキを搭載し、抑速ブレーキや応荷重装置も装備しています。台車は近畿車輛製KD-99ダイレクトマウント式空気ばね台車を採用しています。

車内設備

客室の妻仕切りには「やまなみ模様」の化粧板、カーテンには「吉野かすみ」をデザインしたものが採用され、沿線のイメージが表現されています。座席はシートピッチ1,050mmで、桜をイメージしたピンク系のモケットが使用されています。肘掛け内蔵式テーブルや「カンガルーポケット」と称する小物入れなど、独自の工夫が凝らされています。

リニューアル

2011年には、内外装のリニューアルが実施されました。外観は、車体裾部のグラデーションがピンク色に変更され、桜をイメージしたデザインとなりました。内装では、モ26200形がデラックスカーに改装され、吉野産の木材や和紙を使用した上質な空間が演出されています。レギュラーカーの座席も交換され、快適性が向上しました。

モ26100形とモ26400形には展望スペースが設置され、前面展望が楽しめるようになりました。モ26300形には車椅子対応座席や多機能トイレが設置され、バリアフリー化が図られています。

編成

4両編成で、吉野側からモ26100形-モ26200形-モ26300形-モ26400形となっています。2019年4月1日現在、2編成8両が古市検車区に配置されています。

運用

1990年3月15日のダイヤ改正から、大阪阿部野橋駅と吉野駅を結ぶ特急として運行を開始しました。2024年3月16日のダイヤ変更までは、平日朝の通勤時間帯に8両編成で運行される列車も設定されていました。

南大阪線、吉野線はカーブが多いため、最高速度は110km/hに制限されています。

26000系「さくらライナー」は、吉野への観光輸送を支えるとともに、沿線の魅力を発信する役割を担っています。

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