逆輸入 〜航空局〜

『逆輸入 〜航空局〜』（Reimport vol.2 Civil Aviation Bureau）は、椎名林檎が2017年12月6日にリリースした2枚目のセルフカバーアルバムです。前作『逆輸入 〜港湾局〜』から約3年ぶりとなる本作は、2000年から2017年にかけて、椎名が様々なアーティストに提供してきた楽曲を、彼女自身が再解釈し、新たな命を吹き込んだ作品です。2018年3月2日にはアナログ盤も発売されました。

収録曲は全11曲で、石川さゆり、ICHIGO-ICHIE（深津絵里）、栗山千明、柴咲コウ、SMAP、高畑充希、ともさかりえ、Doughnuts Hole、林原めぐみといった、ジャンルを超えた豪華なアーティストへの提供曲が並びます。タイトルの「航空局」には、提供時に椎名が綿密に構築した楽曲を、リアレンジを最小限に抑えて「直行便」「直送便」のように届けたいという意図が込められています。

前作では、楽曲ごとに異なるプロデューサーを迎えていましたが、本作では斎藤ネコ、村田陽一、名越由貴夫、朝川朋之という、椎名林檎の近年の音楽制作に欠かせない4人の音楽家と彼女自身が編曲を担当。それぞれの個性を活かしつつ、緻密なやり取りを経て、楽曲を再構築しています。椎名林檎は、あくまで自身のカバーを「分家・亜流・オルタナティブ」と位置づけており、提供先のアーティストへの敬意を払いながら、楽曲を新たな視点から捉え直しています。キーは椎名の声に合わせるのではなく、楽器を優先してアレンジされているのも特徴です。

演奏には、楽曲ごとに最小2名から最大30名までのアンサンブルが編成され、総勢80名もの演奏家が参加しています。初回限定生産盤はケース付きハードカバー・ブック仕様で、通常盤と合わせて、コンサートツアーのチケット先行予約シリアルナンバーが封入。購入先着特典として特製クリアファイルが付属しました。アナログ盤は、180g重量盤仕様の初回プレス限定で発売されました。

収録曲について

人生は夢だらけ（Ma vie, mes rêves）: 高畑充希が出演したかんぽ生命のCMソングとして提供した楽曲のフルバージョン。CM版から歌詞が大幅に変更され、新たな解釈が加えられています。
おいしい季節（The Creamy Season）: 栗山千明へ提供した楽曲。東京事変や椎名林檎のソロコンサートでも披露されてきた楽曲で、先行配信もされました。
少女ロボット（Girl Robot）: ともさかりえへ提供した楽曲。本作収録にあたり、村田陽一によって大幅なリアレンジが施されました。
暗夜の心中立て（Le vœu d'amour）: 石川さゆりへ提供した楽曲。「(生)林檎博'14」でも披露されていました。
薄ら氷心中（A Double Suicide）: 林原めぐみへ提供した楽曲。キーやBPMが大幅に変更されています。
重金属製の女（The Heavy Metallic Girl）: 野田秀樹の舞台に提供した楽曲。歌詞が英語に変更され、ブックレットには新たな対訳が掲載されています。
おとなの掟（The Adult Code）: ドラマ『カルテット』の主題歌としてDoughnuts Holeへ提供した楽曲。歌詞が日本語から英語に変更されています。
名うての泥棒猫（Le célèbre chat voleur）: 石川さゆりへの提供曲で、管楽器を導入しないアレンジが特徴です。
華麗なる逆襲（Splendid Counterattack）: SMAPへ提供した楽曲。ストリーミング配信は行われていません。
野性の同盟（The Wild Union）: 柴咲コウへ提供した楽曲。CD版では次曲とシームレスにつながる構成ですが、配信版ではそれぞれ独立して再編集されています。
* 最果てが見たい（¿Dónde quiere estar mi alma viajera?）: 石川さゆりへ提供した楽曲。朝川朋之による新たなアレンジが加えられています。

『逆輸入 〜航空局〜』は、椎名林檎の音楽家としての多才さと、彼女が提供曲に込めた想いを、新たな形で堪能できる作品です。単なるセルフカバーにとどまらず、提供先へのリスペクトと、自身の音楽性を融合させた、聴き応えのあるアルバムと言えるでしょう。

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