通信線路

通信線路とは

通信線路は、有線電気通信において、電気信号を伝送するための物理的な経路です。これには、加入者宅と通信事業者の局舎を結ぶ線路や、局舎間を結ぶ線路が含まれます。通信線路は、その種類や敷設場所、伝送技術によって様々な特性を持ちます。そのため、通信線路における故障箇所の特定は、通信サービスの安定性において非常に重要な要素となります。

通信線路の区分

通信線路は、その役割によって大きく二つに区分できます。

1. 加入者線路
- 加入者線路は、加入者端末を直接収容するための線路です。一般的に迂回路は設けられておらず、信頼性を高めるために二重化されることもあります。通信事業者局舎から加入者までの一般的な構成は以下のようになります。

電気通信事業者局舎の主配線盤 → とう道 → 地下管路 → き線点 → 架空線路 → 端子函 → 保安器 → 加入者端末

- 光収容の場合、き線点または端子函で光信号と電気信号の変換が行われます。

2. 中継線路
- 中継線路は、通信事業者局舎間を中継する線路です。公衆交換網においては二重化が義務付けられており、信頼性の高い通信を実現するために不可欠です。
- 市内中継線路: 単位料金区域内の中継線路
- 市外中継線路: 単位料金区域外と接続を行う中継線路

通信線路の敷設場所と方法

通信線路の敷設場所は、その特性や環境によって様々です。

- 架空: 電柱などを利用して空中に配線する方法です。比較的コストが低いというメリットがありますが、電線が露出しているため、自然災害や事故の影響を受けやすいという側面もあります。一般的に、配電線の下部に敷設されることになっており、車道、歩道、水路などとの間に一定以上の空間距離が設けられています。
- 地中: 地下空間に配線する方法で、電線類の地中化を推進する上で重要な技術です。架空配線と比較してコストは高くなりますが、景観を損ねることがなく、災害による影響も受けにくいという利点があります。

- 共同溝: 電力線やガス管など他のライフラインとともに収容される場合があります。
- 地中管路: 地中に直接管路を埋設し、その中にケーブルを通す方法です。

- 海底・水底: 大陸間を結ぶ長距離の通信線路に使用されます。水中中継器の実用化により、長距離の通信が可能になりました。

通信線路の特性

通信線路の特性は、伝送する信号の周波数帯域に大きく影響されます。一般的に、使用する周波数帯域が広いほど高速通信が可能になり、多重化回線数を増やすことができます。しかし、メタリック回線では、高周波帯域になるほどリアクタンスやコンダクタンスなどの損失が大きくなるため、中継増幅器の間隔を短くする必要が出てきます。したがって、一つの回線で使用する周波数帯域が狭く、多重化回線数が少ないほど長距離の無中継通信が可能になります。

通信線路の伝送路と歴史

通信技術の進化とともに、伝送路も大きく変化してきました。

- 初期: 絶縁被覆が存在しなかった時代には、碍子で絶縁された裸電線が使用されていました。その後、絶縁電線が使用されるようになりました。
- 装荷ケーブル: 電線間のキャパシタンスが長距離通信において無視できなくなったため、これを補正するインダクタンス（装荷コイル）を付加した装荷ケーブルが開発されました。この技術により、通信距離が大幅に伸びましたが、伝送帯域が狭く、遅延時間が大きいなどの課題がありました。
- 無装荷ケーブル: 松前重義氏の提唱により、1932年には無装荷ケーブルによる長距離伝送の可能性が示されました。これにより、より広帯域の通信が可能になりました。
- 同軸ケーブル・導波管: 更なる多重化を可能にするため、同軸ケーブルや導波管が使用されるようになりました。
- 光ファイバーケーブル: 1990年代以降、価格の低下とともに光ファイバーケーブルが中継線路に導入され、高速・大容量通信を実現しました。2000年代に入ると、光収容、FTTH（Fiber To The Home）、FTTx（Fiber To The x）といったより加入者に近い部分での光ファイバー化が進められています。

法的規制

通信線路の敷設・管理は、有線電気通信法および有線電気通信設備令によって規定されています。また、通信線路の障害となる樹木の剪定や伐採、他人の所有地を横断する場合の仲裁措置などが定められています。電気通信事業法では、事業用電気通信設備規則に基づき、線路主任技術者が工事や保守の監督を行うことが義務付けられています。