進藤長之

進藤長之の生涯と職務

進藤長之（しんどう ながゆき）は江戸時代前期から中期にかけて活躍した青侍であり、近衛家に仕官する傍ら、数々の官位を受ける人物でした。彼は青侍の進藤長昌（輪王寺宮守澄法親王の家臣）の次男として誕生しました。父・長昌の母は、大石良勝の娘であり、その家系の影響を受けながら成長しました。

長之が家の跡を継がなかった背景には、長昌の長男である泰通がその役割を果たしていたことが挙げられます。そのため長之は親族である近衛家の家臣、進藤長房の養子となりました。これにより、彼は近衛基煕、家煕、家久といった三代にわたって近衛家に奉仕することになります。

近衛家は摂関職を持つ名門であり、長之はその中で諸大夫として天皇から官位を頻繁に賜りました。特に延宝8年（1680年）には正六位下修理大進に叙任され、その後も修理亮任官を経て、元禄14年（1701年）には正五位下刑部大輔に任じられました。

元禄14年には、有名な赤穂藩主・浅野長矩の刃傷事件が発生した年でもありました。この事件が起こった同年3月、長之は勅使として江戸へ向かう際に柳原資廉や高野保春と同行していました。江戸での出来事を受けて、京都に戻った長之は主君の近衛基煕に報告を行い、その後、基煕を通じて東山天皇にも事の経緯が伝えられました。

この事態について、基煕や天皇は喜んでいるかのように記されていますが、その後、浅野家の断絶や赤穂義士の行動に対して同情や喝采が記載されることはなかったため、歴史家の野口武彦はこの事を「武家同士の紛争や幕府の不祥事を面白がったのではないか」と考えています。

さらに、長之は元禄16年（1703年）に従四位下、宝永5年（1708年）には従四位上に昇格し、享保元年（1716年）には正四位下に昇進しました。その後、享保10年（1725年）に隠居し、自身の生活を落ち着かせるために鴨河西涯三本木に移りました。享保12年（1727年）に63歳で亡くなり、浄華院に葬られました。

逸話と創作

長之に纏わる逸話の一つには、赤穂城の開城後に親族である赤穂藩士の進藤俊式や大石良雄を近衛家の管理下に迎え入れたとされる一件があります。また、忠臣蔵などの演劇作品では、大石良雄が江戸へ向かう際に金銭を求めたものの、断ってしまった結果、その理由を後で知り、悔やんだというストーリーが描かれています。

しかし、実際には良雄が山科の邸宅で静かに過ごしている時期には、討ち入りを計画することはなく、その後、進藤俊式が義盟から脱退し大石を説得する一方、長之が討ち入りに賛同した形跡は見当たりません。本当の歴史とは異なる解釈が、物語としての魅力を生み出しているのです。

長之の生涯は、当時の背景や歴史的な出来事の中で見逃されがちな存在かもしれませんが、彼の経験や立場からは多くの事を学ぶことができるでしょう。

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