逸見吉之助

逸見吉之助：日本の鉱物学を牽引した巨星

逸見吉之助博士（1919年6月28日-1997年11月11日）は、日本の地球科学、特に鉱物学分野において、多大な貢献を果たした世界的にも著名な研究者でした。岡山大学名誉教授を務め、その研究内容は国内外で高く評価され、後進の育成にも尽力されました。

岡山市に生まれた逸見博士は、岡山一中、第六高等学校を経て、1941年に東京大学理学部地質学科を卒業。その後、満州国大陸科学院高等官試補や岡山県立岡山操山高等学校教諭を経験した後、1951年に岡山大学理学部講師として着任しました。1952年には助教授に昇進し、教授、理学部長を歴任、1984年に退官し名誉教授となりました。

博士の研究活動は、日本の鉱物学史に大きな足跡を残しています。戦後間もない頃、岡山県倉敷市の三吉鉱山で、日本で初めて砒銅ウラン石を発見しました。これは、日本の鉱物学研究において画期的な出来事であり、博士の鋭い洞察力と探究心を示す重要な業績です。

さらに、逸見博士は広島県庄原市東城町久代と岡山県高梁市備中町布賀において、高温型スカルン鉱床を発見しました。この発見は、高温型スカルンの成因解明に大きく貢献しただけでなく、数多くの世界新鉱物の発見にも繋がりました。これらの発見は、日本の、ひいては世界の鉱物学研究に多大な貢献を果たし、博士の卓越した研究能力を改めて示すものです。

逸見博士の研究室からは多くの優秀な研究者が輩出しました。その弟子には、沼野忠之氏（岡山大学名誉教授）、草地功氏（岡山大学名誉教授）、そして博士の娘である逸見千代子氏（元岡山大学准教授）などがいます。金沢大学名誉教授の奥野正幸氏も、博士の指導を受けた研究者の一人です。これらの弟子たちは、現在も日本の鉱物学研究の中核を担い、博士の研究精神を受け継いでいます。

博士の功績は高く評価され、1978年には櫻井記念会櫻井賞（第15号）を受賞しました。そして1986年には、布賀で発見された新鉱物に、逸見吉之助博士と娘の千代子氏の鉱物学への貢献を称え「逸見石」と命名されました。この命名は、博士の生涯にわたる研究活動が、いかに高く評価されているかを如実に示しています。

逸見吉之助博士は、卓越した研究能力と指導力、そして並々ならぬ探究心で日本の鉱物学研究を大きく発展させました。その功績は、多くの研究者や学生に受け継がれ、これからも日本の鉱物学を支え続けるでしょう。博士の業績は、未来の研究者たちにとって、常に大きな刺激と指針となるに違いありません。

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