道増

道増の生涯

道増（どうぞう、永正5年（1508年） - 元亀2年3月1日（1571年3月26日））は、戦国時代の僧侶で、天台宗寺門派の中でも特に著名な聖護院門跡の第30代門主として知られています。彼は、当時の関白・近衛尚通の子として誕生し、早くからその運命を示すような出来事に巻き込まれました。

聖護院門跡の継承

道増は幼少のころから聖護院門跡としての未来を担うことが決まっていました。生後間もなく、道応法親王の申し出により、聖護院の後継者としての地位が用意されていたのです。しかし、道応法親王の急死により、道増はわずか3歳で門跡を継承することとなり、さらには熊野三山検校職の補任を巡る争奪戦にも巻き込まれました。

道増がこの地位に就く際、彼の父・近衛尚通は熊野三山検校職の任命に反発し、自らの派閥を維持するために幕府に働きかけましたが、最終的には彼の後継者としての地位が認められました。しかし、この経緯の中で、聖護院の権威は危機に瀕し、経済的には苦境に立たされました。

修行と実践

道増は聖護院門下の上乗院で修行を重ね、1520年頃まではその修行に専念しました。1536年には僧正として認められ、1541年には准三宮の宣下を受けるなど、彼の宗教的リーダーシップが次第に際立っていきました。また、彼は修験道における山岳修行も重視し、大峰や熊野、葛城山などを巡る修行を行い、身体と精神を鍛えました。

修験道本山派の形成

道増は、時代背景の中で地元の山伏を編成し、聖護院門跡が直接在地の山伏を掌握する体制を築きました。この動きは、室町期に視られたものとは異なり、戦国期特有のものでした。道増が役銭を徴収することで、山伏の権利を守り、彼らの宗教活動を支える仕組みが整備されたのです。

将軍使節としての活動

道増は足利将軍家との密接な関係を築いており、その妹が足利義晴に嫁いでいることからも、彼は将軍の信任を受けた存在でした。彼は将軍使節として各地を巡り、特に和睦の調停に尽力しました。駿河国や甲斐国、下総国、相模国などを訪問し、さまざまな抗争の調停に関与しました。

彼の活動は成功を収め、将軍が近親者の中から道増を選ぶ理由も、彼の修験道における権威や宗教的地位にあったと言われています。さらに、道増は地方の寺社からの依頼に基づき、朝廷における取次ぎの役割も果たしました。

最後の年

道増は1571年に亡くなりますが、その生涯にわたる業績は後の道澄に受け継がれ、道増が築き上げた基盤の上にさらなる発展が期待されました。その生涯は、戦国時代の宗教と権力の中でどのようにバランスを取り、成長していったかを示す貴重な例として、歴史に刻まれています。

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