遠城寺宗知

遠城寺 宗知

遠城寺宗知（えんじょうじ むねとも）は、日本の医学界において顕著な足跡を残した病理学者です。1926年11月24日に誕生し、2010年6月21日に逝去しました。九州大学名誉教授として、病理学の研究、教育、および診断の現場で長年にわたり活躍しました。

生涯と教育

福岡市に生まれた宗知は、高名な病理学者であり、九州大学医学部長や総長、さらには久留米大学学長などを歴任した遠城寺宗徳の長男にあたります。恵まれた家庭環境で育ち、福岡県中学修猷館、旧制福岡高等学校を経て、1951年3月に九州大学医学部を卒業しました。

研究者としてのキャリア

大学卒業後、医師としての初期研修期間を経て、病理学の道を志します。九州大学医学部の病理学教室に入局し、特に今井環教授が主宰する第一講座で研鑽を積みました。助手、講師と順調にキャリアを重ね、1958年10月には助教授へと昇任します。この間、研究能力を高めるため、米国ボストンへの留学も経験しています。

研究で得た知見を活かすため、帰国後の1963年3月には、新設された鹿児島大学医学部第二病理学教室の初代教授として招聘されました。新たな教室の立ち上げに尽力し、地方における病理学の発展に貢献しました。

1970年10月には、母校である九州大学医学部へ戻り、第二病理学講座の第4代教授に就任しました。大学に戻ってからも、病理学研究の第一線で指導的役割を果たします。1975年1月からは、九州大学医学部附属病院の病理部長も兼任することとなり、診断業務にも深く関わりました。特に外科病理学の分野に情熱を注ぎ、軟部腫瘍（筋肉や脂肪などの非上皮性組織から発生する腫瘍）の研究においては、国内でも有数の権威と目されるようになりました。その研究成果は、多くの論文や著書として発表され、後進の病理学者たちの指針となっています。

定年退職後の活動

1990年3月、長年にわたる教育・研究・診断への貢献に対し、九州大学を定年により退職しました。その功績が称えられ、同大学より名誉教授の称号が授与されました。退職後も医学界との関わりを持ち続け、公的な立場で医療の発展に寄与します。

具体的には、1990年5月から2002年5月まで福岡県対がん協会の会長を務め、がんの予防や啓発活動、患者支援などに尽力しました。また、国際的な学会活動にも積極的に参加し、1992年1月から1994年12月までは国際病理アカデミー日本支部の会長を務め、日本の病理学研究を国際的に発信する役割を担いました。

著書

病理学の教育と普及にも熱心で、専門書や共著を通じて多くの医師や学生に知識を伝えました。

• - 『腫瘍病理学講本』（九州大学出版会、1979年）
• - 『わかりやすい病理学』（南江堂、1989年、共著）

2010年6月21日、脳腫瘍により83歳で逝去しました。遠城寺宗知は、日本の病理学、特に外科病理学の進歩に大きく貢献し、多くの優れた病理学者を育成したことで、医学史にその名を刻んでいます。

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