遠山直道

遠山 直道（とおやま なおみち）

1925年12月3日、東京府に生まれた遠山直道は、実業家として日興證券の要職を歴任する傍ら、若き日には優れたサッカー選手としても活躍しました。日興證券創業者の遠山元一氏の三男にあたり、多彩な才能を発揮した人物として知られています。

生涯とキャリア

遠山氏は旧制府立高校時代からサッカーに打ち込み、その才能を開花させました。1944年に東京帝国大学経済学部に進学しますが、当時は太平洋戦争の真只中であり、学内でのサッカー活動は厳しい制約を受けていました。しかし、終戦を迎えると、遠山氏は東京帝国大学のア式蹴球部（サッカー部）の再建に奔走し、復活を果たしたチームで主将を務めるなど、リーダーシップを発揮しました。そして、1946年5月に開催された復興後初の全日本サッカー選手権大会において、東大LBの一員として見事に優勝という輝かしい成績を収めました。兵役を免れたことも、戦後の混乱期における彼の活動を可能にした要因の一つとされています。

大学を卒業した1948年、遠山氏は自身の出版社であるダヴィッド社を創立し、その社長に就任しました。出版業界での事業を展開する一方、1954年11月には父が創業した日興證券（現在のSMBC日興証券）に入社し、取締役秘書役を務めることになります。同年、出版事業とは異なる分野にも進出し、新東宝映画の『美しい人』という作品の製作を手がけるなど、その活動は多岐にわたりました。日興證券では、1955年12月に債券部に配属された後、要職を歴任。常務、専務を経て、1966年には遂に副社長の座に就き、将来の社長候補として大きな期待が寄せられる存在となりました。

また、実業界での活躍だけでなく、青年経済人の育成にも情熱を注ぎました。1965年度には、一般社団法人日本青年会議所の会頭として、1年間の任期を務め、社会貢献活動や国際交流にも尽力しました。

精力的に活動を続けていた遠山氏ですが、1973年3月5日、マヨルカ島からロンドンへ向かう途上、搭乗していたイベリア航空504便がフランス・ナント上空で空中衝突事故に巻き込まれ、不慮の死を遂げました。享年47歳という若さでした。その死を悼み、1974年にはダヴィッド社から追悼本『遠山直道』（遠山直道追想録刊行会編）が出版され、多くの関係者によって彼の功績と人柄が偲ばれました。

家族

遠山氏は、中央信託銀行会長や日本銀行大阪支店長を歴任した白根清香氏の三女である美代子氏を妻に迎えました。また、家族には著名な人物が多く、長兄には音楽評論家の遠山一行氏、次兄には指揮者の遠山信二氏がいます。子女にも恵まれ、長男は慶應義塾大学准教授の遠山元道氏、次男は実業家として知られる遠山正道氏です。

遠山直道氏は、サッカー選手としての栄光、出版事業の創業、そして日本を代表する証券会社の副社長として経営を担うなど、短い生涯ながらも様々な分野でその才能を発揮し、確かな足跡を残しました。その急逝は、関係各界に大きな衝撃を与えましたが、彼の残した功績は今なお語り継がれています。

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