邑知潟

邑知潟：白鳥の郷と豊かな歴史

概要

石川県羽咋市に位置する邑知潟は、古くから人々の生活と深く関わってきた潟湖です。別名、千路潟、菱潟、大蛇潟とも呼ばれ、その面積は4.65平方メートル（干拓以前は7.87平方メートル）とされています。水深は1.43メートル、水面標高は1メートルで、淡水湖として知られています。

邑知潟は、能登半島基部の羽咋市から中能登町、七尾市にかけて広がる邑知潟地溝帯の南西部に位置し、羽咋川を通じて日本海に繋がっています。幅2～4メートル、延長26キロメートルに及ぶこの地溝帯の中ほどに、邑知潟は存在しています。

特に10月中旬から3月下旬にかけては、多くの渡り鳥、特にハクチョウが飛来することから「白鳥の里」として有名です。ハクチョウの他に、カモ、サギ、猛禽類など、多様な鳥類を観察できます。

邑知潟の周囲には、干拓によって造成された9つの輪中が存在します。これらの輪中では、独自の治水システムが用いられています。輪中外に降った雨は、吉崎川、飯山川、長曽川などの水路を通じて直接邑知潟に排水され、輪中内の雨水も8ヶ所のポンプ場によって潟に排出されます。このシステムは、輪中への浸水を防ぎ、農地を守り、潟の生態系を維持する上で重要な役割を果たしています。

かつては、コイ、フナ、ワカサギなどの淡水魚が豊富に生息し、盛んに漁業が行われていました。また、トキの生息地でもあり、大国主命と大蛇の伝説も残るなど、歴史と文化の豊かな場所でもあります。

歴史

縄文時代、邑知潟は羽咋市四柳付近まで及ぶ大きな入り江でした。しかし、氷河期以降、手取川などから運ばれた土砂が堆積し、羽咋砂丘の形成によって次第に閉ざされ、現在の潟の姿となりました。この変化は、原始的な水稲耕作に適した環境を生み出すきっかけとなりました。

江戸時代初期の万治年間頃からは、干潟や浅瀬を利用した新田開発（新開）が盛んに行われ、吉崎新村、金丸出村、潟崎村、堀替新村などの集落が誕生しました。これは、自然干拓から人工干拓への移行を示す重要な歴史的過程です。

しかし、日本海の満潮による海水侵入が稲作に被害をもたらす問題が発生しました。これを防ぐため、1929年には邑知潟沿岸土地改良区によって水門が設置されました（現在は存在しません）。しかし、この水門により海水の侵入は阻止されたものの、海産魚類の遡上が妨げられ、淡水系の藻類や菱の異常繁殖、水温低下、微生物の減少など、生態系に大きな変化が生じました。

このため、1933年から1938年にかけて石川県により干拓工事が行われ、漁師に新たな農地が提供されました。しかし、1944年には千路干拓堤防が水害によって決壊し、再び潟に戻ってしまいました。

その後、1948年には国営干拓事業として邑知潟の全面干拓が開始され、1968年に完成しました。そして、2004年には潟の両岸を結ぶ邑知潟大橋が竣工し、交通の利便性も向上しました。

まとめ

邑知潟は、自然と人間の関わりが複雑に織りなされてきた歴史を持つ、貴重な場所です。渡り鳥の飛来地としての役割、かつての豊かな漁場としての役割、そして、干拓事業の歴史など、多角的な視点からその価値を理解することが重要です。現在も、その生態系と歴史的遺産を守りながら、地域社会の発展に貢献しています。

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