那覇市民会館

那覇市民会館の歴史と文化

那覇市民会館は、かつて沖縄県那覇市寄宮に存在した多目的ホールです。1970年11月に開館し、2016年10月に老朽化のため閉館しました。その後、後継施設として那覇文化芸術劇場なはーとが2021年10月31日に開館しています。

アメリカ統治下での誕生

那覇市民会館は、アメリカ統治下の1970年11月に完成しました。設計を手掛けたのは、南風原村（現・南風原町）出身の建築家、金城信吉氏です。建設費は182万ドル（当時）で、そのうち16万ドルは県内外の機関や市民からの募金で賄われました。開館当初、大ホールには1,504席、中ホールには800人規模の収容力がありました。大ホールには2枚の緞帳があり、そのうち1枚は松下電器産業（現パナソニック）からの寄贈によるものでした。

沖縄の伝統を取り入れたデザイン

戦後の沖縄では、アメリカ様式の建物が増加する一方で、沖縄の風景が失われつつありました。そのような状況の中、那覇市民会館は沖縄の伝統的な建築様式を取り入れ、沖縄各地から集められた資材を使って建設されました。「あまはじ」や「ヒンプン」といった沖縄民家の特徴的な要素がデザインに反映され、沖縄らしさを表現しています。

大規模改修とモダン建築としての評価

1993年には大規模な改修工事が行われ、大ホールの座席数は1,372席に減少しました。しかし、2006年にはDOCOMOMO JAPANによって「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定され、その建築的価値が再認識されました。

老朽化による閉館と解体

2007年頃から、那覇市民会館では経年劣化によるコンクリートの剥離が頻発するようになりました。那覇市は2015年から耐震検査を実施し、老朽化に伴う耐震性の問題が浮上しました。2016年10月、耐震基準を満たしていないことが判明し、市民の安全を確保するため、無期限で休館することになりました。

その後、専門家や市民による「那覇市民会館保存可能性等検討委員会」が設置され、施設の取り扱いについて議論が行われました。耐震補強工事には多額の費用と時間がかかること、また、外観を損なう可能性も指摘され、最終的に「部分復元」を基本とする解体という結論に至りました。2019年10月には、その方針が那覇市長に答申されました。保存するべき特徴的な部分として、「ひんぷん」や「雨端（あまはじ）」、「赤瓦」などが挙げられました。

デジタルアーカイブ化

解体されることになった那覇市民会館ですが、その歴史と文化的価値を後世に伝えるため、デジタルアーカイブ化プロジェクトが立ち上がりました。那覇市とNHK沖縄放送局が協力し、3Dデータとして記録保存が行われました。そのデータを基に、「バーチャル那覇市民会館」が制作され、VR体験として公開されました。

その他の特記事項

• - 沖縄復帰記念式典: 1972年5月15日、沖縄返還の際に、那覇市民会館は東京の日本武道館と共に、復帰記念式典の会場として使用されました。
• - 跡地活用: 那覇市民会館の跡地には、2028年に「新真和志支所複合施設（仮称）」が建設される予定です。

アクセス

• - ゆいレール安里駅から徒歩約10分

周辺施設

• - 与儀公園
• - 沖縄県立図書館（旧図書館の建物は残存）
• - 那覇市立図書館

参考文献・外部リンク

• - 那覇市公式サイト
• - 琉球放送
• - 沖縄テレビ放送
• - FMぎのわん
• - 沖縄アーカイブ研究所
• - 琉球銀行

那覇市民会館は、沖縄の歴史と文化を象徴する重要な建築物でした。その姿は失われることになりますが、デジタルデータとして保存され、後世に語り継がれていくでしょう。

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