邦枝完二

邦枝 完二（くにえだ かんじ）

邦枝完二は、1892年12月28日に東京に生まれた日本の小説家です。本名は邦枝莞爾。彼は「双竹亭竹水」という雅号でも知られています。完二の戸籍上の誕生日は1893年1月1日とされていますが、実際の誕生は前年の末です。

幼少期と教育

完二は東京市麹町区で生まれ、300石取りの幕臣である祖父を持ち、父親は馬術に長けていました。母方の叔父は浮世絵や江戸の戯作者に興味を持つ人でした。そのため、完二は少年期からこれらの文化に触れ、影響を受けて育ちました。彼は麹町小学校から商工中学校を卒業後、慶應義塾大学予科や東京外国語学校に入学しましたが、本格的な学生生活を送ることはありませんでした。むしろ、創作活動に情熱を注ぎ、在学中に永井荷風に私淑し、彼の推薦で処女作『廓の子』が雑誌「三田文学」に掲載されました。

文筆活動の始まり

その後も完二は「三田文学」に多くの作品を発表し、同誌の編集にも関わりました。慶應義塾大学を中退後、時事新報の記者を経て、1920年に帝国劇場文芸部に入ると、戯曲集『邪劇集』や『異教徒の兄弟』を著しました。1923年からは文筆に専念し、次々と作品を発表。1928年には『東洲斎写楽』を発表し、江戸の情緒を豊かに表現した小説で名を知られるようになりました。特に『歌麿』（後に『歌麿をめぐる女達』に改題）や『おせん』、『お伝地獄』などは、当時の江戸時代の風俗をリアルに描写しています。これらの作品は多く映画化され、彼の名声をさらに高めました。

晩年の活動

1940年には藤沢市鵠沼に転居し、ここで後半生を過ごしました。戦中は地域文化の発展に寄与し、歌舞伎の上演を行ったり、戦後は「湘南文庫」や「鵠沼自由大学」を結成して地元文化の向上に貢献しました。1950年には『東京一代女』、翌年には『千姫』などの優れた作品を発表し、文学界での存在感を確立しました。また、1954年には母校のために校歌『暁の空』を作詞しました。

最期と後世への影響

1956年8月2日、完二は膵臓癌により64歳で亡くなりました。彼の墓所は多磨霊園にあります。
完二の家族についても触れておくと、長女の木村梢は映画女優として活躍し、後に随筆家としても知られています。また、次女のクニエダヤスエは日本のテーブルコーディネートの草分けです。完二の作品や人生は後世に影響を与え、多くの人々に愛されています。彼の描いた江戸情景や人間模様は、今もなお多くの読者に親しまれ続けています。

邦枝完二の文学は、時代小説のとりわけ重要な一部分を形成し、彼の作品は現在でも多くの新しい解釈や鑑賞がなされています。また、感性豊かな作品は映像化されることで、さらなる広がりを見せており、彼の名は今でも日本の文壇で輝きを放っています。

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