邪淫の館・獣人

『邪淫の館・獣人』（じゃいんのやかた じゅうじん、仏: LA BÊTE、英: THE BEAST）は、1975年に製作されたフランスのエロティックホラー映画です。ワレリアン・ボロズウィックが監督を務め、禁断の愛と欲望をテーマに、衝撃的な映像で観る者を魅了します。

概要

本作は、ボロズウィック監督が自身のオムニバス映画『インモラル物語』の一エピソードとして構想していた短編を、プロデューサーの説得を受けて長編映画化したものです。当初、『インモラル物語』は全5話の構成となる予定でしたが、結果的に全4話となりました。日本では、主に洋画ポルノを配給していた東映洋画が1978年に成人映画として劇場公開しました。ポスターには「乱欲の果て《獣愛》に狂い咲く白裸のわななき！」というキャッチコピーが記されています。

あらすじ

物語は、静かな森に囲まれた館を舞台に展開します。館の主であるレスペランス侯爵は、動物にしか関心を示さない内向的な息子マチュランと、厳格な叔父バロ侯爵と共に暮らしています。レスペランス侯爵は、没落しかけた家を救うため、マチュランとアメリカの富豪の娘ルーシーとの縁談を進めようとしていました。ルーシーとその叔母バージニアが館に到着すると、広間には侯爵夫人ロミルダの肖像画が飾られており、彼女の日記が見つかります。そこには、熊か狼に似た獣の絵とともに、「私は彼と出会い、戦った」という言葉が記されていました。

レスペランス侯爵は、マチュランに洗礼を受けさせようとしますが、バロ侯爵は、マチュランが洗礼を受けると死ぬと反対していました。しかし、レスペランス侯爵は強引に洗礼の儀式を執り行います。ルーシーが自室で休息していると、不思議な夢を見ます。その夢の中で、侯爵夫人ロミルダは、全身を黒い毛で覆われた巨大な野獣に出会い、激しい獣姦に溺れていきます。夢の中で、ロミルダは獣の圧倒的な力と快楽に翻弄され、激しく交わるうちに快楽の絶頂を迎えます。しかし、夢から覚めたルーシーがマチュランの部屋に行くと、彼はベッドから落ちて死んでいました。

騒ぎを聞いて駆けつけたバージニアは、マチュランの右手に獣のような爪が生えていることに気づきます。さらに、マチュランの身体は毛深く、尻には尾が生えていたのです。バージニアとルーシーは、マチュランが「獣人」であることを悟り、恐怖に駆られて館を逃げ出します。その後、バチカンから枢機卿が到着し、マチュランの遺体を見て、獣姦の罪深さを語るのでした。

キャスト

ロミルダ・レスペランス侯爵: ギイ・トレジャン
ルーシー: リスベス・ユメール
マチュラン: ピエール・ベネデッティ
バロ侯爵: マルセル・ダリオ
バージニア: エリザベス・カーザ
ロミルダ侯爵夫人: シルパ・レーン
クラリス: パスカル・リヴォール
司祭: ロナルド・アルモンテル
ジョゼフ・バロ枢機卿: ジャン・マルティネリ

スタッフ

監督、脚本、編集: ワレリアン・ボロズウィック
製作: アナトール・ドーマン
美術: ジャック・ドヴィーディオ
撮影: ベルナール・ダイレンコー、マルセル・グリニョン
録音: ジャン・ピエール・ルー
音楽: ドメニコ・スカルラッティ
製作会社: アルゴス・フィルム

製作の背景

映画プロデューサーのアナトール・ドーマンは、当初アラン・フライシャー監督の「Les Rendez-vous en forêt」を製作していましたが、より刺激的な要素を加えるためにボロズウィック監督に獣の登場するシーンの追加撮影を依頼しました。しかし、フライシャー監督が拒否したため、ボロズウィック監督は自身の映画『インモラル物語』にこのアイデアを利用することを考えました。当初は短編として構想されていましたが、ドーマンの説得により、長編映画『邪淫の館 獣人』として製作されることになりました。

映画審査と検閲

完成した映画は、イギリスの映画審査機構BBFCに提出されましたが、露骨な性描写が問題視され、大幅なカットが必要となりました。BBFCは、馬の交尾シーン、マスターベーションのクローズアップ、野獣が女性の股間に鼻先を突っ込むシーン、野獣が女性に覆いかぶさるシーン、そして女性の身体に精液が大量に流れるシーンなどを問題点として指摘しました。結果、大幅にカットされたバージョンでも審査を通過することができませんでした。

キャストについて

ロミルダ役を演じたシルパ・レーンは、写真家のデイヴィッド・ハミルトンに見いだされたフィンランド出身の女優です。本作出演後、70年代から80年代初頭にかけて多くのセクスプロイテーション映画に出演しましたが、1999年にAIDSのため46歳で亡くなりました。

ビデオソフト

日本では、東芝映像ソフトからVHSカセットが発売され、1986年には大映からレーザーディスクが発売されました。2002年にはコムストック・グループから「ノーカット・ヘア解禁版」として初のDVD化が、2016年にはアネックから「ヘア無修正 HDリマスター版」としてDVDが発売されています。

評価

レビュー・アグリゲーターのRotten Tomatoesでは、22件の評論家レビューのうち68％が肯定的な評価を得ています。ガーディアン紙の映画評論家ピーター・ブラッドショーは、「ボロズウィックの最高傑作」と絶賛し、その不条理さの中に素晴らしい何かがあると評しました。BBCのデビッド・ウッドは、男性視点のファンタジーの不快さを指摘しつつも、この映画が奇妙な魅力を放ち、本物のエロチシズムの瞬間を含んでいると述べています。

反響

IMDbでは、「全裸の女性が薔薇の花で自慰行為をする」、「若い女性と野獣のシーンには、頻繁な射精、クンニリングス、勃起した巨大な陰茎にしゃぶりつく女性など露骨な性描写が満載」、「女性が後背位で野獣とセックスし、獣が女性の尻に射精するシーンで、女性は快感で歓喜の表情を浮かべる」など、性的な描写に関する意見が多く見られました。また、軽度の暴力と残酷描写に関する意見として、「獣によって引き裂かれた血まみれの仔羊の死体が映る」などが挙げられています。

外部リンク

邪淫の館 獣人 - MOVIE WALKER PRESS
邪淫の館 獣人 - allcinema
邪淫の館 獣人 - KINENOTE
邪淫の館 獣人 - 映画.com
* La bête - IMDb（英語）

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