郡県制とは
郡県制(ぐんけんせい)は、
古代中国における地方統治制度で、地域を郡と県に分け、中央から派遣された
官吏がその管理を行いました。この制度は、封建的な世襲制に代わる新しい支配方法として登場し、王朝の
中央集権体制を強化する重要な役割を果たしました。また、
東アジアの他の地域、特に日本や
朝鮮半島の
古代王朝においても郡県制は制度的な影響を与えています。興味深いことに、日本の近代以降の制度では、郡と県の役割が逆転しています。
先秦時代の郡県制
郡県制は、
春秋時代の末期から戦国時代にかけて、晋や
秦、楚といった諸国で実施されました。最初は、直轄地が県に分類され、辺境の地域が郡として管理されていました。この時代の中央から
官吏が派遣され、その地域を統治する方式が始まりました。
秦代の郡県制
紀元前4世紀、
秦の孝公の時代に郡県制が具体化しました。孝公は商鞅を起用し、咸陽を中心に41県を設けて統治を行いました。この時、郡は他国を併合した際にその地域を指すことが一般的で、県の設置はその後のプロセスでした。制度の整備は
始皇帝によってなされ、彼は全国を36郡に分け、その下に県を設置し、皇帝によって任命された
官吏が派遣されました。
郡の管理者は「郡守」と呼ばれ、郡における治安を担当する「郡尉」や監察を行う「郡監」が配置されました。また、県の長官は大きな県では「令(県令)」、小さな県では「長(県長)」と称され、県の警察には「県尉」が、監査役として「県丞」が登用されました。
漢代以降の変遷
前漢時代には、郡国制が採用され、中央から直接管理される郡県には
秦の制度が引き続き用いられました。紀元前148年には、郡守が郡太守、郡尉が郡都尉と名称が改められました。さらに紀元前106年、武帝が全国を13
州に分け、各
州に刺史を配置したことで、郡県制が
州・郡・県の3段階体制に発展しました。
魏晋南北朝の時代に入ると、
州、郡、県の数は増加し、問題が顕在化しました。南北朝末期には、1
州に1郡しかないといった非効率な地方行政が見られました。583年には
隋が郡を廃止し、
州と県だけで構成される
州県制が導入されました。しかし607年には
州が廃止されて再び郡が設置され、郡県制が復活しました。
618年に
唐が
隋を滅ぼすと、郡は
州に改められ再び
州県制が適用されました。627年には全国が10道に分けられ、道・
州・県の3段階に整理され、742年には
州が郡に改められて一時的に郡県が復活しましたが、758年には再度、郡は
州に改められ消滅しました。
脚注
このように、郡県制は
古代中国の地方行政において重要な役割を果たし、その影響は後の時代や他の地域にも及びました。この制度を通して、
中央集権体制が徐々に確立されていく過程を知ることができます。