都電杉並線

都電杉並線：幻の都心を結んだ路面電車の記憶

杉並線は、かつて東京都の新宿と荻窪を結んでいた都電の路線で、高円寺線と荻窪線を合わせた通称です。この路線は、西武鉄道の西武軌道線を買収したもので、都電14系統として東京都交通局によって運営されていました。

路線データ

軌間: 1067mm
路線距離: 7.3km（全線併用軌道）
停留所数: 19（廃止時）
複線区間: 全線（廃止時）。1951年買収時は新宿駅前 - 鍋屋横丁間
* 電化区間: 全線（直流600V）

歴史

杉並線の歴史は、1897年（明治30年）に堀之内軌道に対し角筈 - 荻窪 - 田無 - 所沢間の軌道特許状が下付されたことに始まります。しかし、計画は遅々として進まず、資金難に苦しむ中で、1921年に武蔵水電がこの軌道を買収しました。武蔵水電は、川越鉄道と西武軌道を結び、川越から都心への直通を目指しましたが、路線の問題点や電力業界の再編などにより、計画は放棄されました。

東京市買収後

1942年（昭和17年）に東京市電気局が新宿線の運営管理を行い、市電路線に編入。その後、東京都制施行に伴い東京都交通局へと改組されました。しかし、1962年（昭和37年）に全通した営団地下鉄荻窪線（現：東京メトロ丸ノ内線）との競合により、1963年（昭和38年）と早い段階で廃止されました。

停留所一覧

1934年（昭和9年）の資料に見られる停留所は以下の通りです。

新宿駅前 - ガード下 - 浄水場前 - 警察前 - 成子坂下 - 淀橋 - 住友銀行前 - 寶仙寺前 - 中野銀行前 - 登記所前 - 鍋屋横丁 - 追分 - 橋場 - 西町 - 天神前 - 妙法寺口 - 高圓寺 - 馬橋 - 松ノ木口 - 西馬橋 - 阿佐ヶ谷 - 田端 - 成宗 - 天沼 - 荻窪

最終時点での停留所は以下の通りでした。

新宿駅前（新宿駅）、柏木一丁目（西新宿駅）、成子坂下、本町通二丁目（中野坂上駅）、本町通三丁目、鍋屋横丁、本町通五丁目（新中野駅）、本町通六丁目、高円寺一丁目、高円寺二丁目（東高円寺駅）、蚕糸試験場前、杉並車庫前、馬橋一丁目（新高円寺駅）、馬橋二丁目、阿佐ヶ谷、杉並区役所前（南阿佐ケ谷駅）、成宗、天沼、荻窪駅前（荻窪駅）

車両

買収時点では全車が木造車であり、他の路線でシングルポール化が進む中、杉並線のみが戦前と同じダブルポールを使用していました。その後、鋼製車への改造や新造が行われましたが、1963年の廃止時には2000形と2500形が在籍していました。

乗降客数

1950年代には乗降客数が大幅に増加しましたが、地下鉄の開通により減少しました。

廃止後の代替バス

地下鉄丸ノ内線に加え、都営バスも並行路線を持っていたため、廃止後の代替路線は設けられませんでした。しかし、西武バスと関東バスが代替となる路線を開設しましたが、都営や営団に対抗できず廃止となりました。

杉並線は短命に終わりましたが、都心と郊外を結ぶ重要な役割を果たし、その歴史は今も語り継がれています。

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