鄺埜

鄺埜（こう や）の生涯

鄺埜（こう や）は、明代に活躍した官僚で、字を孟質、号を樸斎と称しました。洪武18年（1385年）に生まれ、正統14年（1449年）に65歳で没しました。彼の出身は郴州宜章県です。

若年期と官僚への道

鄺埜は、句容県教官の鄺子輔の息子として生を受けました。幼くして母を亡くし、祖母の李氏によって育てられました。永楽9年（1411年）には進士に合格し、その才能を早くから示しました。その後、監察御史に任命され、官僚としてのキャリアをスタートさせました。

監察御史としての活動

監察御史として、鄺埜は不正を正す役割を担いました。永楽帝が北京にいた際、南京の通貨制度が乱れているとの報告を受け、鄺埜が調査に派遣されました。南京では大規模な逮捕が行われるとの噂が広がりましたが、鄺埜は市場の有力者数名を逮捕するにとどめました。また、倭寇が遼東を侵犯した際には、規律を失った守備兵の死刑判決に対して、酌量すべき事情を述べ、永楽帝に死罪を猶予させました。さらに、北京城の建設においては、多数の労働者の労務調整を任され、その手腕を発揮しました。

地方官としての活躍

永楽16年（1418年）、秦州で反乱の計画があるとの噂が流れた際、鄺埜は陝西按察副使に抜擢され、兵を率いて鎮圧に当たるよう命じられました。しかし、鄺埜は反乱の告発が誤りであると主張し、永楽帝は誣告者を処刑しました。宣徳4年（1429年）には、関中での飢饉に対する救済活動を行い、民衆を救いました。父の死去に伴い喪に服した後、宣徳8年（1433年）には応天府尹に任命され、地方行政において手腕を発揮しました。

兵部での活躍

正統元年（1436年）、鄺埜は兵部右侍郎に進みました。辺境の防備が滞っていると意見したことで一時的に投獄されましたが、すぐに釈放されました。翌年には兵部尚書の王驥が軍を率いて出陣したため、鄺埜が兵部の事務を一人で監督することになりました。当時、辺境での事件が頻発し、軍を率いる人材が不足していたため、鄺埜は広く人材を求めるよう請願しました。正統6年（1441年）には、山東での災害に対し、民間の牧馬の賠償を猶予するよう訴え、被災地の復興に貢献しました。

兵部尚書として

正統10年（1445年）、鄺埜は兵部尚書に進みました。彼は、諸衛の百戸以下の交代に関する旧制度を改め、遠方からの試験を不要としました。また、オイラトのエセン・ハーンの勢力が増大する中、大同府の兵力増強と、智謀に長けた大臣を派遣して辺境を巡視させるよう進言しました。さらに、京営の兵士に城の修築をさせるのを止め、休息させて非常時に備えるよう求めましたが、彼の提案は採用されませんでした。

最期

正統14年（1449年）、エセン・ハーンが明に侵攻した際、王振が親征を主導しました。鄺埜は親征に反対し、自重を促しましたが、英宗は聞き入れませんでした。親征軍が出発した後も、鄺埜は宮廷に戻るよう強く求めましたが、聞き入れられず、王振によって本営への随行を命じられました。落馬で重傷を負いながらも、「至尊が戦場にいるのに、病気を理由に勝手なことはできない」として随行を続けました。宣府での宿営後、朱勇が敗戦した際、鄺埜は退却を主張しましたが、王振は聞き入れず、「腐れ儒者が兵事を知るはずがない」と怒り、鄺埜を連れ出しました。翌日、明軍は大敗を喫し、鄺埜は陣中で亡くなりました。享年は65歳でした。景泰元年（1450年）には少保の位が追贈され、成化2年（1466年）には忠粛と諡されました。

鄺埜は、その生涯を通じて、明朝のために尽力し、数々の功績を残しました。彼の功績は後世にも語り継がれています。

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