酒井チエ

酒井チエ

詩人、作詞家として多角的な活動を展開した酒井チエ（さかい ちえ）は、1946年8月29日に生まれた日本の文筆家である。本名は酒井千枝。

略歴と活動

学生時代から文学への関心は深く、普連土学園高等学校在学中に既に、いくつかの雑誌で詩や短編作品を発表し始めていた。その後、多摩美術大学のデザイン科に進学し、1969年に卒業。大学ではグラフィックデザイン科に在籍した原田治とは同期であった。

多摩美術大学でデザインを学んだ経験も活かしつつ、卒業後はファッション誌やティーン向けの雑誌、企業のPR誌といった媒体で執筆活動を行った。これらの活動は、単に文章を書くだけでなく、読者層や媒体の特性に合わせた表現を生み出す能力を培ったと言えるだろう。

こうした雑誌での活動と並行して、酒井チエは音楽の世界にもその才能を広げた。具体的には、テレビCMで使われる楽曲や、レコードとしてリリースされる歌謡曲などの作詞を手がけるようになったのである。この時期から、彼女の表現活動は文学の領域にとどまらず、より広く一般大衆に届けられる音楽の世界へと広がっていった。

主な作詞作品

作詞家としての酒井チエは、複数の著名な楽曲を手がけている。代表的な作品としては、1970年代に活躍した人気歌手、小柳ルミ子のヒット曲として知られる『夏に萌えて』が挙げられる。また、NHKの長寿音楽番組『みんなのうた』では、クニ河内が歌った楽曲『苺の花嫁さん』の詞を提供している。さらに、女優としても活躍する竹下景子が歌唱した楽曲『弟』の作詞も担当した。

子ども向け番組の楽曲も手がけており、日本テレビで放送されていた幼児向け番組『ロンパールーム』で使用された楽曲『みどりせんせいのみ』も彼女の作詞によるものである。この楽曲は、みなみらんぼうが作曲、千代正行が編曲を手がけ、やまみどりやコロムビアゆりかご会によって歌唱され、1978年に日本コロムビアからリリースされている。これらの楽曲は、歌謡曲から番組挿入歌、童謡に至るまで、酒井チエの作詞の幅広さを示している。

著書

酒井チエは、詩人としても複数の詩集を発表している。初期の詩集としては、新書館から1970年代に出版された以下の作品がある。

• - 『優しい約束』（新書館、1971年）
• - 『美しい時間』（新書館、1973年）
• - 『ひとりぼっちで頬杖ついて』（林静一・絵、新書館、1975年）
• - 『いつもあなたを』（わたべあけみ・絵、サンリオ、1977年）
• - 『ね、愛してる?』（林静一・絵、サンリオ、1977年）

これらの詩集は、発表された年代から見ても、雑誌での執筆や作詞活動と並行して、詩作も精力的に行っていたことが伺える。

また、翻訳も手がけている。主な翻訳作品は以下の通りである。

• - 『アーニー 少年時代のヘミングウェイ』（M.H.ミラー・著、新書館、1979年）
• - 『オサムズマザーグース』（原田治・絵、勁文社、2001年）
• - 『OSAMU'S MOTHER GOOSE』復刻版（原田治・絵、復刊ドットコム、2018年）

特に『オサムズマザーグース』は、多摩美術大学の同期であった原田治が絵を手がけており、長年にわたって読まれ続けている作品と言えるだろう。

まとめ

学生時代から詩や短編作品を世に送り出し、多摩美術大学で学んだ後、雑誌の執筆やCMソング、歌謡曲の作詞といった幅広い分野で活躍した酒井チエは、文学と音楽、そしてメディアの世界を横断する独自のキャリアを築いた。詩集の出版や翻訳活動も積極的に行い、多様な表現媒体を通じてその才能を発揮した日本の詩人・作詞家である。

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