酒井恒 (動物学者)

酒井恒：日本の動物学者、カニ研究の第一人者

酒井恒（さかい つね、1903年5月19日 - 1986年2月22日）は、日本の動物学者で、特にカニの研究において顕著な業績を残しました。神奈川県足柄上郡大井町金手出身であり、教育者としても長年にわたり貢献しました。

生涯

酒井恒は、1924年に神奈川師範学校を卒業後、1929年に東京高等師範学校理科三部を卒業しました。さらに、1932年には東京文理科大学文理学部動物学科を卒業し、学問の道を究めました。1939年には、「日本産蟹類の研究」で京都帝国大学から理学博士号を取得しています。

研究者としてのキャリアは、1932年に東京文理科大学附属下田臨海実験所の助手として始まりました。その後、1938年に岐阜県女子師範学校教諭、1943年に神奈川師範学校教授を歴任し、1949年からは横浜国立大学学芸学部の教授として教鞭を執りました。横浜国立大学では、1954年から1955年までと1960年から1961年までの二度、学芸学部長を務め、1954年から1955年まで横浜国立大学学芸学部理科教育岩実験所（真鶴理科教育実験所の前身）所長も務めました。1969年に定年退官した後は、1970年から1979年まで東京家政学院大学の教授として後進の育成に尽力しました。

酒井恒は、その業績が認められ、1952年に神奈川文化賞を受賞、1973年には紺綬褒章を受章、1974年には勲三等旭日中綬章を受勲しました。1961年には初代日本甲殻類学会会長に就任し、1967年からは神奈川県立博物館協議会委員、1978年からは神奈川県自然保護協会会長を務めるなど、多岐にわたる分野で活躍しました。没後、従三位が追贈され、2007年には大井町名誉町民となっています。

研究内容

酒井恒は、カニの研究で特に知られており、その研究は多岐にわたります。日本産のカニ類に関する詳細な分類や生態の研究を行い、多くの新種や新属を発見、記載しました。また、昭和天皇の生物学研究の相談相手を務め、皇居でのアカテガニの産卵習性に関する説明や、教育映画の上映、教材用スライドの献上など、教育普及にも貢献しました。

主な記載種

Pugettia intermedia Sakai, 1938 ヨツハモドキ
Neolithodes nipponensis Sakai, 1971 ニホンイバラガニ
Neopilumnoplax major Sakai, 1978 オオノコギリエンコウガニ（現・Beuroisia major）
Goniopugettia tanakae Sakai, 1986 タナカオニモガニ

著書

酒井恒は、研究成果を広く社会に伝えるため、多くの著書を執筆しました。これらの著書は、専門家だけでなく、一般の読者にも理解しやすいように書かれており、自然科学への関心を高める上で重要な役割を果たしました。

『カニとエビの生活』課外理科文庫刊行会 実験本位課外理科文庫 1931
『日本蟹類図説』三省堂 1936
『潮干狩の動物研究』世界社 理科の自由研究文庫 1952　国土社 1980
『蟹』紫生書院 1956
『海辺の動物 私たちの自然研究』千代田書房 1968
『シーボルトと日本動物誌 日本動物史の黎明』L.B.ホルサイス共著　学術書出版会 1970
『日本産蟹類』講談社 1976
『蟹 その生態の神秘』講談社 1980

酒井恒の功績は、日本の動物学、特に甲殻類学の発展に大きく貢献しました。彼の研究は、現在も多くの研究者によって引用され、参考にされています。

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