酒巻和男

酒巻 和男（さかまき かずお）

酒巻和男は、日本の海軍軍人であり、ビジネスマンとしても著名な人物です。1918年11月8日に生まれ、1999年11月29日に逝去しました。彼は太平洋戦争の初期、特に真珠湾攻撃において特殊潜航艇「甲標的」の搭乗員として参加したことが特に知られています。最終的に彼の階級は海軍少尉でした。

生い立ちと経歴

徳島県阿波郡林村（現在の阿波市）で8人兄弟の次男として育った酒巻は、地元の脇町中学校を卒業後、1940年に海軍兵学校を第68期生として卒業しました。彼の同級生には、有名な作家の豊田穣や広尾彰がいました。卒業後、彼は日本海軍に入隊し、任務に従事しました。

真珠湾攻撃への参加

1941年12月8日、日本海軍は米国領ハワイの真珠湾に対し、奇襲攻撃を行いました。この攻撃はアメリカ海軍の太平洋艦隊に対するもので、酒巻はその戦闘において特別な役割を果たしました。彼は搭乗員として選ばれましたが、出撃前の検査で羅針儀の故障が発見されました。しかし、彼は出撃を望み、その意志が認められました。

12月6日、彼は指定された海域で特述潜水艇を母船から離し、攻撃を開始しましたが、故障した羅針儀のために浅い海域に迷い込み、珊瑚礁に座礁してしまいました。座礁後、アメリカ海軍に攻撃を受けましたが、脱出を試みた結果、再度座礁してしまいました。彼は同士と共に時限爆弾を仕掛けて脱出を試みるものの、漂流の途中で分かれてしまい、最終的には酸欠によって意識を失いながら海岸に漂着しました。

彼を発見したのはハワイ州兵の伍長デビッド・アクイで、こうして彼は対米戦争での最初の日本人捕虜となりました。捕虜となった特潜は米軍に捕らえられ、戦時公債の宣伝材料として米国を巡回展示されることとなりました。

捕虜生活とその後の活動

捕虜としての酒巻は最初、他の乗員と共に戦死したとみなされていましたが、時間が経つうちに彼だけが生存していることが徐々に知られるようになりました。日本海軍はそれを秘密にし、酒巻以外のメンバーは全員戦死扱いとされ、大本営は彼らを「九軍神」として神格化しました。彼は捕虜収容所で自決を望むも拒否され、同じ捕虜たちに生きる道を説くこととなりました。日本語通訳としても働き、彼の態度は賞賛されました。

終戦後、酒巻は1946年にアメリカから帰国しました。その後、知人の紹介でトヨタ自動車工業に入社し、働き始めました。彼はバドミントン部を設立するなど、社内でも面倒見の良い性格が評判でした。また、彼は1969年にブラジルのトヨタの社長に就任し、長いキャリアを築きました。1999年、酒巻は愛知県で亡くなり、81歳でした。

書籍と作品化

酒巻は捕虜生活についての経験を元に、いくつかの著作を残しました。1947年には『俘虜生活四ケ年の回顧』を出版し、1949年には『捕虜第一号』を刊行しました。後者は英訳され、世界的にも注目されました。これらの書籍は長らく絶版でしたが、2020年に復刻版が出版されました。

また、彼の生涯や捕虜生活を題材にしたドラマも制作されました。彼の経験は多くの人々に影響を与え、戦争の悲惨さを伝える貴重な証言として今に伝えられています。

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