酸化亜鉛

酸化亜鉛：多様な用途を持つ白色の化合物

酸化[亜鉛]は、化学式ZnOで表される亜鉛の酸化物であり、亜鉛華や亜鉛白とも呼ばれています。白色の固体として存在し、広い波長域で光を反射する特性を持つため、古くから顔料として利用されてきました。高純度の粉末は透明感を持ち、水には溶けません。しかし、酸や塩基とは反応し、脂肪酸とも反応して微量の亜鉛イオンを生成します。また、大気中の二酸化炭素と水と反応して炭酸塩を生成する性質も持ちます。

物性

常温常圧下では白色の固体ですが、約300℃に加熱すると黄色に変色し、冷却すると元の白色に戻ります。さらに加熱すると、常圧下では906℃で揮発します。これは酸化亜鉛を炭素で還元する温度よりも低いため、還元による亜鉛の製造に適した条件とは言えません。

生産

天然には紅亜鉛鉱として産出しますが、アメリカ合衆国の2鉱山からのみ産出される希少鉱物です。工業的には、金属亜鉛を熱して気化させ、空気中で燃焼させるか、硫酸亜鉛や硝酸亜鉛を熱分解することで製造されます。2016年度の日本国内生産量は56,729トンでした。

用途

酸化亜鉛は、その性質から多様な用途を持っています。

医薬品・化粧品: 酸化亜鉛を含む製剤を皮膚に塗布すると、皮脂から遊離した脂肪酸と反応して亜鉛イオンを生成します。これにより、弱いながらも表皮収れん作用と抗菌作用を示すため、亜鉛華軟膏として外用薬に用いられます。また、亜鉛華デンプンとしてベビーパウダーなどにも利用されます。さらに、日焼け止め剤としても広く使用されています。その高い安全性から、鉛白に代わる白色顔料として、化粧品の白粉などにも用いられています。
顔料: 硫化水素で黒変しないため、絵の具などの白色顔料としても重要です。
電子部品: バリスタ、鉱石検波器、透明電極、光触媒、避雷器、軽オフセット印刷など、電子部品や半導体分野でも広く使用されています。軽オフセット印刷では、感光体として使用され、光をあてた部分が導電化することで、選択的に液体トナーを吸着させ、印刷版を作成します。
半導体: 酸化亜鉛は透明で導電性を持つため、液晶ディスプレイの透明電極材料としての利用が期待されています。また、酸化物半導体としての性質も持ち、青色発光ダイオードなどの発光デバイスへの応用研究も盛んに行われています。しかし、耐酸性が弱く、リソグラフィーなどでの取り扱いが難しいという課題があります。ZnOのバンドギャップは約3.37 eVで、励起子の束縛エネルギーが他の半導体と比べて非常に大きいことが特徴です。P型ZnOの開発が困難でしたが、近年、その製造技術が開発され、紫外光半導体レーザーなどの用途への期待が高まっています。

研究開発

酸化亜鉛の研究は、近年活発に行われています。2004年には東北大学金属材料研究所の研究グループが青色発光ダイオードの開発を発表し、発光デバイスへの応用が期待されました。また、2014年には大阪大学の研究チームが、世界最小の1μmの球形結晶の製造に成功しました。これらの研究成果は、酸化亜鉛の新たな可能性を拓くものとして注目されています。

酸化亜鉛は、その安全性の高さ、多様な特性、そして今後の発展性から、様々な分野で重要な役割を果たし続ける物質と言えるでしょう。

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