里見明正

里見明正：埼玉を彩った洋画家

里見明正は、1912年、埼玉県熊谷市で生まれました。熊谷中学校を経て、1931年に東京美術学校油画科に進学、1936年に卒業という順風満帆なスタートを切ります。

卒業後は、戦前から戦後にかけて活躍した洋画家集団である光風会に所属。同じ光風会会員で、浦和画家の代表格として知られる須田剋太とは特に親交が深く、埼玉県浦和市（現さいたま市南区）別所沼畔に隣り合わせのアトリエを構え、制作活動に励んでいました。別所沼の対岸にアトリエを構えていた林倭衛のアトリエにも、須田と共にしばしば訪れ、画家仲間との交流を深めていた様子がうかがえます。

また、寺内萬治郎を師事する画家たちが集う武蔵野会にも参加しており、多様な画風や作風に触れながら、自身の芸術性を磨いていったと考えられます。

里見の画業における大きな転機となったのが、1942年の第五回新文展への出品です。力作「鶏舎」で初入選を果たしただけでなく、栄えある特選を受賞するという快挙を成し遂げました。この受賞は、里見の才能を広く世に知らしめ、画家としての地位を確固たるものにしたと言えるでしょう。

絵画制作の傍ら、里見は地元文化の発展にも貢献しました。県北美術家協会会長や熊谷市教育委員長などを歴任し、地域社会における芸術文化の振興に尽力しました。その功績は、現在も地元の人々から高く評価されています。

晩年はガンと闘病生活を送っていましたが、1974年、62歳という年齢でその生涯を終えました。しかし、里見が残した作品群は、現在も埼玉県立近代美術館などに収蔵され、後世へと受け継がれています。彼の作品からは、故郷埼玉への深い愛着と、情熱的な創作活動への揺るぎない姿勢が感じられます。

弟子には白石潔がいます。

里見明正は、単なる画家という枠を超え、地域社会に貢献した文化人でもありました。彼の生涯と作品は、埼玉の美術史において重要な位置を占めており、これからも多くの人々に感動と inspirationを与え続けることでしょう。

彼の作品世界を知ることで、戦前・戦後の日本の美術界、そして埼玉の美術史における一断面を理解することができるでしょう。光風会という集団の活動や、浦和画家の存在、そして彼を取り巻く画家仲間との交流といった文脈を理解することで、里見明正という画家の個性と業績をより深く理解することができるでしょう。彼の作品は、単なる絵画鑑賞の対象を超え、時代背景や人々の交流、そして芸術文化の創造と発展という多角的な視点から考察できる、貴重な資料と言えるでしょう。

参考文献：『埼玉の画家たち』（さきたま出版会、2000年）

外部リンク：熊谷デジタルミュージアム 里見明正

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