里見義康

里見義康（さとみ よしやす）

里見義康は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての大名で、安房国館山藩の初代藩主です。父は里見義頼。幼名は千寿丸。

生涯

織豊時代

1573年、安房国の大名・里見義頼の長男として誕生しました。1587年に父が亡くなると、15歳で家督を相続し、左馬頭、左衛門督などの官位を称しました。1588年には、父に続いて豊臣秀吉に臣従し、安房国・上総国両国と下総国の一部を安堵されました。

しかし、1590年の小田原征伐で秀吉の怒りを買い、上総・下総の所領を没収され、安房4万石に減封されます。この原因は、従来の遅参説ではなく、里見氏が庇護していた小弓公方・足利義明の遺児頼淳を擁立し、旧領回復を狙って三浦へ進軍、鎌倉公方家再興を掲げたことが、惣無事令違反とみなされたためと考えられています。この時、徳川家康が仲介に入ったことをきっかけに、里見氏は徳川氏に接近します。家康は義康に対し、里見家と徳川家が新田氏を祖とする同族であるという内容の起請文を送っていますが、この文書は偽文書である可能性が指摘されています。

1590年10月、義康は上洛し、翌年3月には従五位下侍従・安房守に叙任され、織田信長の姪を妻に迎えました。1591年7月には、九戸一揆鎮圧のため東北へ出兵、9月には帰国しています。同時期に、増田長盛による安房国での検地（差出検地）が行われました。また、この年の6月から11月にかけて、居城を岡本城から館山城へ移転しています。

1592年の文禄の役では、家康に随行して肥前名護屋城に滞陣しました。1597年には、増田長盛により安房国で初めて石高制による本格的な太閤[[検地]]が行われ、新たな知行割が行われました。これにより、石高は9万1千石に高直しされ、近世的な「村」が確定し、石高制が確立しました。これにより、大名里見氏の権力基盤が形成されました。

江戸時代

1600年の関ヶ原の戦いでは、徳川家康に従い会津征伐に向かいましたが、関ヶ原へ向かう軍には組織されず、結城秀康の配下として宇都宮城の守備を担当し、上杉景勝の南下を阻止しました。戦後、その功績により常陸国鹿島郡3万石余を加増され、合計12万数千石を領することとなりました。江戸幕府が開かれると、国持大名の列に加わりましたが、1603年11月16日に死去。家督は10歳の嫡男・梅鶴丸（後の忠義）が相続しました。

系譜

父：里見義頼（1543-1587?）
母：龍雲院 - 正木時茂の娘
正室：織田信長の姪
長男：里見忠義（1594-1622）
男子：里見忠堯

参考資料

大野太平『房総里見氏の研究』寶文堂書店、1933年。
市村高男「豊臣政権と房総―里見分国上総没収をめぐって―」『千葉県史研究』2号、1994年。
岸野達也「陸奥の仕置反対一揆と里見氏」『里見氏研究』第3号、2024年。
滝川恒昭「里見氏にあてた家康の起請文」『季刊ぐんしょ』58号、2002年。 /所収:滝川恒昭 編『房総里見氏』戎光祥出版、2014年。
滝川恒昭・細田大樹編 編『図説 戦国里見氏　房総の海・陸を制した雄族のクロニクル』戎光祥出版、2022年。
竹井英文 著「房総一和と戦国期東国社会」、佐藤博信 編『中世東国の政治構造』吉川弘文館、2007年。
川名登「房総里見文書の研究」『日本歴史』179号、1963年。
川名登「館山城についての一考察」『商経論集』16号、1983年。
川名登 著「近世初期安房国の検地について―太閤[[検地]]と徳川検地―」、北島正元 編『世の支配体制と社会構造』吉川弘文館、1983年。
* 川名登「里見家臣団組織の成立」『千葉史学』56号、2010年。

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