野口二郎 (甲府市長)

野口二郎：山梨県を牽引した多才な人物

野口二郎は、1900年（明治33年）に生まれ、1976年（昭和51年）に没した日本の実業家、政治家、そして郷土史研究家です。彼は、山梨県において、新聞社経営、市政運営、スポーツ振興、文化活動と、多岐にわたる分野でその手腕を発揮し、地域社会の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと学生時代

野口二郎は、甲府市百石町で、父・英夫と母・いしの次男として誕生しました。幼少期から学業に励み、山梨県尋常師範学校付属小学校、山梨県立甲府中学校（現在の山梨県立甲府第一高等学校）、第八高等学校を経て、1920年（大正9年）に東京帝国大学法学部に入学しました。

山梨日日新聞社社長としての活躍

大学在学中の1922年（大正11年）、父である野口英夫の急逝を受け、学生でありながら山梨日日新聞社の社長に就任するという異例の事態となりました。その後、東京帝国大学卒業後、一時東京朝日新聞社グラフ局に勤務しますが、再び山梨日日新聞社の経営に携わり、以後、長きにわたり同社の発展に尽力しました。社長在任中は、新聞社経営だけでなく、社会、経済、文化、体育など多方面での活動を積極的に展開しました。特に、ドイツ発祥の野外活動であるワンダーフォーゲルの普及に力を注ぎ、1934年（昭和9年）には甲府ワンドラーを創設し、理事長として活動を牽引しました。

甲府市長としての重責

1943年（昭和18年）、甲府市議会で満場一致の推薦を受け、官選第18代甲府市長に就任しました。市長就任に伴い山梨日日新聞社長を辞任し、市政運営に専念しました。しかし、就任直後から戦局は悪化の一途を辿り、1945年（昭和20年）には甲府空襲により市街地が壊滅的な被害を受けました。この未曽有の事態に対し、野口市長は、焼失を免れた水道庁舎を臨時の市役所として機能させ、戦災復興計画を策定し、総務、住宅、輸送、施設、農耕、土木の六部制からなる甲府市戦災復興局を設置するなど、復興に向けて尽力しました。1946年（昭和21年）に市長を辞任するまで、戦後の混乱期における甲府市の復興に大きく貢献しました。

戦後の活動と晩年

甲府市長辞任後、山梨日日新聞社長に復帰しますが、公職追放により一時的に辞任。その後、公職追放が解除されると、再び社長に就任し、新聞社経営を再び担いました。また、山梨県体育協会理事長・会長、オリンピック派遣山梨県後援会会長、山梨県ユース・ホステル協会会長など、スポーツ振興や青少年育成にも積極的に関わりました。特に、戦後の日本におけるユースホステルの普及に尽力し、山梨県における活動を牽引しました。1967年（昭和42年）には甲府商工会議所会頭に就任し、地域経済の発展にも貢献しました。1976年（昭和51年）に75歳でその生涯を閉じましたが、その功績は山梨県民の記憶に深く刻まれています。没後、従四位勲三等旭日中綬章を叙勲されています。

親族と著作

野口二郎の父である英夫は、山梨日日新聞の社長を務めた人物であり、妻のかよは、地元酒造業者の娘でした。長男の英史もまた山梨日日新聞の社長を務め、孫の英一も同社の社長を受け継いでおり、一族で山梨日日新聞を支えてきました。また、郷土史研究家としての顔も持ち、『峡中浮世絵考』などの著作を出版し、郷土文化の掘り起こしにも貢献しました。

野口二郎は、山梨県の発展に大きく貢献した多才な人物であり、その功績は後世に語り継がれるべきものです。

もう一度検索