野村望東尼

野村望東尼について

野村望東尼（のむら もとに）は、1806年10月17日に筑前国御厩後（現在の福岡市中央区赤坂）で生まれた幕末の女流歌人であり、勤王家として知られています。彼女は後に贈正五位を受けることになります。

生い立ちと教育

望東尼は福岡藩士・浦野重右衛門勝幸の三女として生まれ、幼名は「モト」と呼ばれていました。幼少期から和歌や書道に親しむために二川相近に学びました。彼女は13歳の時に行儀見習いとして林家に仕官し、様々な技術を習得しました。

早婚と再婚

17歳で福岡藩士の郡甚右衛門と結婚するも、短期間で離縁し実家へ戻ります。その後は和歌や書道に加え、尊皇思想を学ぶことになります。24歳の時に福岡藩士・野村新三郎貞貫と再婚し、幸いなことに子どもたちも含めた家庭生活を営みましたが、子どもたちは多くが若くして亡くなりました。

晩年の隠棲と政治活動

天保3年には夫と共に大隈言道の門下に入門しましたが、弘化2年には夫が隠居し、彼女は平尾山荘に隠棲しました。安政6年には夫を失ったことを受けて剃髪し受戒します。文久元年、大坂を訪れ、活発な政治活動に関与していくことになります。この時期、彼女は尊皇攘夷派の商人や政治家と交流し、次第に政治に興味を持つようになりました。

勤王に向けた活動

望東尼は福岡に戻った後も、訪問者を匿うなどして勤王の志士たちを支援しました。彼女は多くの志士と密接に関わり、特に長州藩士の高杉晋作とは詩歌を通して深い関係を築きました。彼女の隠れ家は多くの歴史的な出来事の舞台にもなりました。

追放と最期

慶応元年、福岡藩内での弾圧が強まる中、彼女は孫と共に自宅謹慎を命じられました。高杉晋作と最後の別れを交わした後、彼女は流刑にされ、姫島で過ごすことになりました。彼女はその期間中、政治活動を続けていましたが、健康を害し、1867年11月に62歳で亡くなりました。彼女の辞世の句は「雲水のながれまとひて花の穂の初雪とわれふりて消ゆなり」です。

影響と遺稿

望東尼には「向陵集」「上京日記」「姫島日記」などの遺稿が残されています。特に『上京日記 姫島日記』は磯辺実の校訂によって1943年に出版され、彼女の思想や活動が後世に伝えられています。彼女の生誕地には碑が立てられ、また彼女が密会場所として利用した山荘は平尾山荘公園として整備されています。

まとめ

野村望東尼は幕末の turbulentな時代において、歌人としてだけでなく、社会の変革に寄与した重要な女性の一人です。彼女の生涯は、文学活動と政治的な活動が交差する中で、強い意志を持って生き抜いた女性の姿を示しています。

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