野球肘

野球肘（やきゅうひじ）とは

野球肘は、野球の投球動作によって肘に生じる痛みや運動障害の総称であり、別名リトルリーガー肘やベースボール肘とも呼ばれます。これは、投手に多く発症するスポーツ障害であり、特に成長期の野球選手にとって深刻な問題です。早期発見と適切な治療が、将来の野球 जीवनを左右すると言っても過言ではありません。

原因

主な原因は、過剰な投球数による肘の酷使です。投球動作では、肘関節に極度の外反ストレスがかかり、同時に前腕の筋肉も強く収縮します。この繰り返しによって、肘の内側や外側に微小な断裂が生じ、炎症や痛みを引き起こします。特に成長期には、骨や軟骨がまだ発達段階にあるため、より損傷を受けやすい状態です。

症状

野球肘の症状は、大きく3段階に分けられます。

軽度: 痛みが軽微で、X線検査では異常が見られない段階です。
中度: 腫れや圧痛が顕著になり、X線検査でも変化が認められる段階です。
重度: 患部が大きく腫れ、激しい痛みと運動制限が生じる段階です。重度になると、軟骨が剥離したり、関節内に遊離体（関節ねずみ）が生じたりすることがあります。

離断性骨軟骨炎（OCD）と呼ばれる状態になると、軟骨や骨が剥がれ落ち、関節の機能が著しく損なわれます。この状態は予後が悪く、症状が出現した時にはすでに病状が進行していることが多いです。

予防

野球肘の予防には、以下の点が重要です。

適切な投球フォーム: 肘に負担のかからないフォームを習得することが大切です。
投球数の制限: 成長期の選手は、特に投球数を制限する必要があります。
ウォーミングアップとクールダウン: 投球前後のストレッチや柔軟運動は欠かせません。
メディカルチェック: 定期的な検診で、肘の状態をチェックすることが重要です。

近年では、野球肘検診や少年野球検診といったメディカルチェック、指導者への啓蒙活動が各地で行われています。また、小学校レベルでは、予防のためにピッチングマシンで試合を行う試みもあります。

治療

野球肘の治療は、症状の程度によって異なります。

応急処置: 障害が発生した際は、RICEの法則（Rest（安静）、Ice（アイシング）、Compression（圧迫）、Elevation（挙上））に従って対処します。
保存療法: 軽度から中度の場合は、安静、投球制限、リハビリテーションなどを行います。電気治療や温熱療法なども有効です。
手術療法: 重度の場合は、靭帯や腱の移植、関節遊離体除去などの手術が必要となることがあります。肘の靱帯断裂に対する手術として、トミー・ジョン手術が知られています。

投球フォームの改善は、根本的な解決策として非常に有効です。下肢の支持機能や柔軟性を高めることで、上肢に頼らない適切な投球動作が可能になります。

専門外来

野球肘の専門的な治療を受けられる医療機関も存在します。例えば、北海道大学病院スポーツ医学診療センターなどがあります。

まとめ

野球肘は、適切な予防と早期治療によって改善が期待できるスポーツ障害です。成長期の野球選手は、特に肘の状態に注意し、痛みや違和感を感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。

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