野麦峠

野麦峠とは

野麦峠は、岐阜県高山市と長野県松本市の境に位置する、標高1,672mの峠です。飛騨国（現在の岐阜県北部）と信濃国（現在の長野県）を結ぶ古道の一部であり、歴史的に重要な役割を果たしてきました。この峠は、乗鞍岳と鎌ヶ峰の間にあり、長野県道・岐阜県道39号奈川野麦高根線が通っています。

歴史

野麦峠は、古くから飛騨と信濃を結ぶ重要なルートであり、特に江戸時代には、高山が天領となったことで代官が往来に利用し、また、越中富山の薬売りもこの峠を利用して各地へ向かいました。しかし、峠道は非常に厳しく、幕府は天保の頃に頂上に「お助け小屋」を設置しました。この峠は、能登で獲れたブリを飛騨を経由して信州へ運ぶ道としても利用されていたそうです。

明治時代に入ると、野麦峠は、飛騨地方の貧しい農村から、現金収入を得るために諏訪地方の製糸工場へ出稼ぎに行く少女たちの道となりました。この厳しい峠越えの史実は、山本茂実のノンフィクション小説『あゝ野麦[[峠]]』で全国的に知られるようになりました。

1911年（明治44年）の中央線開通や1934年（昭和9年）の高山線全通により、峠を徒歩で越える人は減りましたが、1968年に『あゝ野麦[[峠]]』がベストセラーとなったことで、観光客が訪れるようになりました。その後、1997年（平成9年）には安房トンネルが開通し、木曽方面へは長峰峠が主要道路となったため、野麦峠は観光道路としての役割が中心となっています。

峠の名の由来

野麦峠の名前は、峠に群生する隈笹が10年に一度、麦の穂に似た実を付けることから、土地の人が「野麦」と呼んでいたことに由来します。凶作時には、この実を採って団子にして飢えをしのいだといいます。また、小説では、出稼ぎ先の工場で妊娠し、峠越えの最中に胎児を流産する工女もいたことから、「野産み峠」が転じて「野麦峠」となったという説も紹介されています。

野麦峠の難所

野麦峠は、野麦街道最大の難所として知られ、かつては多くの人がこの峠を越えました。特に、明治時代に出稼ぎに行った少女たちは、厳しい自然環境の中、雪深い峠道を徒歩で越えており、途中で命を落とすことも少なくありませんでした。そのため、峠には「お助け小屋」が設けられ、遭難した人々を救済していました。

現在の野麦峠

現在、野麦峠は、観光地として多くの人々が訪れます。岐阜県側は県立自然公園としてハイキングコースが整備されており、長野県側では県史跡として旧街道の一部が保存されています。峠には、休憩施設として再建された「お助け小屋」や、野麦峠の歴史を紹介する資料館「野麦峠の館」がありましたが、老朽化により閉館し、資料は隣接するお助け小屋に移設されました。冬季は積雪のため約半年間は通行止めとなりますが、日本の秘境100選にも選ばれており、その自然美は訪れる人々を魅了します。

まとめ

野麦峠は、歴史と自然が織りなす魅力的な場所です。古くから交通の要所として、また、多くの人々の生活を支えてきたこの峠は、今もなお、その歴史を物語っています。

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