金フラン

金フランとは

金フラン（通貨コード：XFO）は、1930年から2003年4月1日まで国際決済銀行（BIS）の勘定単位として用いられていた通貨です。その後、特別引出権（SDR）にその役割を譲り、廃止されました。この金フランは、フランス革命期に登場した金貨、フラン・ジェルミナルを基準としていました。具体的には、フラン・ジェルミナルと同じく9/31グラム（約290.322ミリグラム）の純金にその価値が固定されていました。

ラテン通貨同盟（LMU）が金本位制から離脱した後も、金フランはフラン・ジェルミナルの純金量を維持し続けました。また、国際電気通信連合（ITU）や万国郵便連合（UPU）といった国際機関の条約において、国際通信や国際郵便の料金の単位として採用されていた歴史を持ちます。

ニューヘブリディーズでの金フラン

かつて英仏共同統治領であったニューヘブリディーズ（現在のバヌアツ）では、郵便切手に記載される通貨単位として金フランが使用されていました。これは、万国郵便条約で定められた国際郵便料金が金フランと金セントで表記されていたため、共同統治下にあったニューヘブリディーズでも同様の表記を採用する必要があったからです。一方、通常の貿易においてはオーストラリア・ドルとニューヘブリディーズ・フランが使用され、初期の現地政府の予算文書ではイギリス・ポンドが使用されるなど、ニューヘブリディーズの通貨事情は非常に複雑な状況でした。

スイスにおける金フラン導入の試み

2011年3月9日、スイスでは、既存の通貨に加えて金フランを導入するという法案が国民議会（下院）に提出されました。この法案は、経済財政委員会で検討されたものの、同年6月の会合で否決されることになりました。

この法案で提案された金フランは、0.1グラムの純金と定義されていました。重要な点は、この金フランの導入は、既存のスイス・フランを廃止したり、置き換えたり、あるいは固定化するものではなかったという点です。つまり、金フランとスイス・フランは共存する関係にありました。金フランの金属含有量が固定されていたため、スイス・フランとの交換レートは、他の変動相場制の通貨と同様に、市場の需給に応じて変動することになるはずでした。

この金フラン導入の背景には、金融危機時などにスイス・フランが安全資産として買われる傾向があることから、金フランを導入することで国際資本の流れをそちらに誘導し、金フランをハードカレンシーとして確立するという目的がありました。また、スイス国立銀行が保有する金とは独立して、金フランはスイス連邦政府の監督下で、スイス国内の商業銀行のみによって鋳造されることになっていました。

金フラン法案の支持者たちは、金フラン制度によって、最低投資額と取引単位を小さくできることで、より多くの人々が少額から金投資に参加できることを期待していました。

まとめ

金フランは、国際的な決済や通信、郵便料金の基準として利用された歴史を持つ通貨単位であり、その価値は純金量によって固定されていました。また、スイスでは追加通貨として導入する試みもありましたが、実現には至りませんでした。金フランの事例は、通貨制度の多様性と、経済状況の変化に応じた通貨の役割を考える上で興味深い事例の一つと言えるでしょう。

参考資料

* Gold Franc Association - coordinating the efforts to introduce the gold franc as additional currency in Switzerland.

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