硫化鉄鉱

硫化鉄鉱（りゅうかてっこう）

硫化鉄鉱は、鉄と硫黄が結合した鉱物の総称であり、代表的なものとして黄鉄鉱（FeS2）、白鉄鉱（FeS2）、磁硫鉄鉱（Fe1-xS）などが挙げられます。これらの鉱物は、かつて硫酸や鉄を製造するための重要な原料として利用されていました。

日本における硫化鉄鉱

日本の硫化鉄鉱鉱床は、主に中新世の火山砕屑岩層、特にスピライトーケラトフイア岩系の岩石帯に集中しています。これは、アルプス地向斜発展期の初期段階に形成されたものと考えられています。かつては十勝岳や九重山などの活火山周辺で、硫黄採掘に従事する鉱山が点在していました。

硫化鉄鉱から得られた硫黄は、自然硫黄や黄鉄鉱とともに、硫酸や硫酸アンモニウムの原料として利用されました。戦国時代には鉄砲の火薬の原料として、明治時代にはマッチの材料として用いられ、日本の近代化に貢献しました。1950年代の朝鮮戦争時には、硫黄の市場価格が高騰し、「黄色いダイヤ」と呼ばれるほど鉱工業の花形として注目されました。

しかし、朝鮮戦争終結後、硫黄の需給構造は大きく変化しました。石油精製における脱硫技術の発展により、硫黄が副産物として大量に生産されるようになったため、硫黄の購入コストが大幅に低下しました。また、硫酸も石炭や銅、鉛、亜鉛の製錬過程で発生する排ガスから製造されるようになり、硫化鉄鉱の需要は激減しました。

このような状況を受け、日本では自然硫黄や硫黄、黄鉄鉱を精製する目的での硫化鉄鉱の利用は完全に停止しました。1972年には、ほとんどの硫黄鉱山や硫化鉄鉱山が閉山に追い込まれました。岡山県美咲町（旧柵原町）にあった柵原鉱山は、かつて東洋一の規模を誇る硫化鉄鉱鉱床でしたが、需要の減少により1991年に閉山しました。

硫化鉄鉱は、かつて日本の鉱工業を支えた重要な資源でしたが、技術革新と資源の多様化により、その役割を終えました。しかし、硫化鉄鉱が日本の産業発展に貢献した歴史は、忘れてはならないでしょう。

参考文献

光野千春、沼野忠之、高橋達郎『原色図鑑 岡山の地学』山陽新聞社、1982年。ISBN 4-88197-108-5。

関連項目

鉱石
硫化鉄
鉱物 - 硫化鉱物

外部リンク

* 『硫化鉄鉱』 - コトバンク

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