山田道美

山田道美九段：戦後将棋界を彩った鬼才の生涯

山田道美（やまだ みちよし）は、1933年愛知県名古屋市に生まれ、1970年、わずか36歳の若さで夭折した、昭和を代表する将棋棋士です。金子金五郎九段に師事し、その卓越した戦法と研究心で、将棋界に大きな足跡を残しました。

名古屋から東京へ、そして棋士の道へ

中学生時代から将棋に打ち込んだ山田は、高校時代、金子金五郎九段の元で内弟子として研鑽を積みます。その後、上京し、奨励会を経て1951年に四段に昇段。順位戦に初参加し、その才能を早くから開花させました。

順位戦での活躍とタイトル獲得

順位戦では、一時病気で休場する時期もありましたが、着実に実力をつけ、1960年にはB級1組に昇級。その後も順調に昇級を重ね、1964年にはA級に昇級を果たします。

1964年、A級順位戦で優勝。そして、1967年、悲願だったタイトル獲得を果たします。対戦相手は、当時将棋界の絶対王者であった大山康晴十五世名人。棋聖戦で大山を破り、棋聖位を獲得しました。さらに、翌期も防衛に成功。しかし、その後の棋聖戦で中原誠に敗れ、タイトルを明け渡すことになります。

大山康晴との激闘

山田の活躍時代は、大山康晴全盛期と重なります。山田は、大山をライバル視し、常に闘志をむき出しにして対戦しました。両者の対戦成績は10勝19敗と大山が優勢ではありましたが、その対局は常に白熱したものであり、将棋史に名を残す好勝負が数多く繰り広げられました。二人の関係は、単なるライバルを超えた、一種独特の緊張感と相克関係だったといえるでしょう。有名なエピソードとして、対局中に大山が山田の姿勢を注意したところ、「まぶしくてかなわん。頭巾をかぶってくれないか」と、すかさず言い返した逸話があります。

研究への情熱と後進への影響

山田は、徹底的な研究を好むことで知られていました。一日一局しか指さなかったというエピソードからも、その研究への並々ならぬ情熱が伝わってきます。当時、まだ珍しかった将棋データベースの作成にも取り組み、戦型別の勝敗分析なども行っていたと言われています。

また、関根茂、宮坂幸雄、富沢幹雄らと共に振り飛車研究会を設立。後進の育成にも熱心で、多くの奨励会員に指導を行い、彼らの中には後にプロ棋士として活躍する者も多数輩出しています。中原誠、青野照市、田丸昇などがその代表的な例です。

急逝と残された功績

1970年6月18日、特発性血小板減少性紫斑病により急逝。36歳という若さでその生涯を閉じました。A級順位戦在籍中であり、十段戦、王位戦の挑戦者決定リーグにも出場中であったという事実が、彼の充実した棋士人生と早すぎる死をより一層悲しくさせます。

山田道美は、その優れた棋力、徹底した研究、そして後進の育成に尽力した姿勢によって、現代将棋の基礎を築いた一人として、今も将棋ファンから深く記憶されています。

著作と人物像

山田は将棋に関する著作も多く残しており、その中には自戦記や戦法研究書なども含まれます。将棋以外にも、クラシック音楽や文学を愛し、特にドイツ文学に造詣が深かったという一面も持ち合わせていました。

お酒を飲まず、賭け事を一切しなかったというエピソードからも、ストイックで真面目な人物像がうかがえます。

山田道美の急逝は、将棋界にとって大きな損失でした。しかし、彼の残した功績は、今も将棋界に大きな影響を与え続けています。彼の生涯は、私たちに、努力の大切さと、才能の輝きを改めて教えてくれるでしょう。彼の棋譜や著作は、後世に語り継がれるべき貴重な財産です。

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