金思万

金思万：波乱の政治人生と物議を醸した発言

金思万（キム・サマン、1916年または1919年3月10日 - 没年不明）は、大韓民国の法曹界と政界で活動した人物です。短いながらも波乱に満ちた政治家人生を送っており、その生涯は、韓国近代史の激動を反映するものです。

華麗なる経歴から政治家への転身

金思万は日本統治時代の忠清北道槐山郡で生まれました。ソウル大学法科大学を中退した後、弁護士試験に合格し、ソウルや釜山で弁護士として活躍しました。法律のプロフェッショナルとしての実績を着実に積み重ね、釜山地方法院判事職務代理やソウル地方法院判事、さらには弘益大学校講師も務めるなど、幅広い経験を積んでいきます。司法と教育の両面で才能を発揮した彼の経歴は、後に政治家としての道を歩む礎となりました。

3日間の国会議員と5・16軍事クーデター

1961年、安東濬の公民権制限に端を発した第5代国会議員補欠選挙で、金思万は見事当選を果たします。しかし、その喜びも束の間、直後に発生した5・16軍事クーデターによって、宣誓することなく議員職をわずか3日間で失うこととなりました。この出来事は、彼の政治家人生における大きな転換点であり、運命の皮肉を感じさせるエピソードです。

大統領選挙と物議を醸した発言

1963年の大統領選挙では、金思万は尹潽善候補陣営に加わり、精力的な活動を展開します。10月10日、栄州郡（現・栄州市）で行われた演説で、金思万は衝撃的な発言を行いました。彼は、釜山と大邱地域に朝鮮戦争後に残留した共産主義者が多いこと、そして朴正煕候補が麗水・順天事件に関与していたという趣旨の発言をしたと報道されました。

この発言は、大きな波紋を呼びました。翌11日夜には、民政党本部が10名以上の怪漢に襲撃されるという事件が発生。尹潽善候補は僅差で落選し、この出来事との関連性が指摘されています。金思万自身は新聞広告で釈明を試みましたが、民政党から除名処分を受けました。この事件は、韓国政治史においても記憶される重要な出来事の一つであり、金思万の発言が選挙結果に影響を与えた可能性は否定できません。

政界引退とその後

1967年の第7代総選挙に新民党公認で立候補した金思万は落選し、政界を引退します。その後の人生については、あまり情報が残されていません。しかし、彼の短いながらも強烈な政治家人生は、韓国の民主化への道のりを理解する上で重要な一章を刻んでいます。金思万の生涯は、激動の時代を生きた一人の法曹家、政治家のドラマであり、その功績と過ちは、現代韓国社会を考える上で重要な示唆を与えてくれます。彼の発言が、大統領選挙の結果に影響を与えたかどうか、またその真意はどこにあったのか、様々な憶測や解釈が今でも存在します。この事件は、韓国の政治における言論の自由と責任、そして選挙制度の脆弱性を問いかける、歴史的事件として今後も研究が続けられるでしょう。

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