金沢職人大学校

金沢職人大学校

金沢職人大学校は、石川県金沢市によって設立され、その運営は指定管理者である公益社団法人金沢職人大学校が担う独自の教育機関です。一般的な学校教育法や職業能力開発促進法に基づく施設とは異なり、金沢職人大学校設置条例に基づいて設置されています。創造の拠点である金沢市民芸術村に隣接して設けられ、金沢の誇る豊かな伝統文化を支える職人技術を保護し、次世代へと伝えるための場として開設されました。職人技術の確かな伝承と、未来を担う人材育成に力を注いでいます。

本校を運営する公益社団法人は、金沢市からの出資に加え、地域の9つの関連団体からも資金を得ており、地域全体で職人文化を支える体制が構築されています。

歩み

金沢職人大学校の主な沿革は以下の通りです。

1996年（平成8年）：社団法人として設立され、金沢職人大学校が開校しました。
1998年（平成10年）：教材などを収蔵するための土蔵が完成しました。
1999年（平成11年）：市内の長町地区に研修塾が開設され、また茶室「匠心庵」も設けられました。
2000年（平成12年）：「職人さんの道具収集事業」が開始され、伝統文化に触れる「職人さんの謡曲教室」が発足しました。
2002年（平成14年）：子ども向けの学びの場として「子どもマイスタースクール」が開講し、歴史的建造物の保存修復に関する「歴史的建造物修復研究会」が発足しました。
2006年（平成18年）：「職人さんのお茶教室」が始まりました。
2009年（平成21年）1月：金沢市が「歴史的風致維持向上計画」に基づき、国から「歴史都市」の第1号認定を受けました。
2012年（平成24年）4月：法人の形態を社団法人から公益社団法人へ移行し、登記を行いました。

教育プログラム

金沢職人大学校では、専門技術の習得を目指す正規の課程として本科と修復専攻科を設置しています。これらに加えて、市民向けの公開講座や、子ども向けの「子どもマイスタースクール」、そして特定の技術や文化に特化した研究会や教室（「職人さんの謡曲教室」、「歴史的建造物修復研究会」、「手縫い畳床研究会」など）も開催され、幅広い層に学びの機会を提供しています。市民公開講座は平成9年から継続して実施されています。

本科

本科では、以下の多岐にわたる伝統技術分野について学ぶことができます。

石工
瓦
左官
造園
大工
畳
建具
板金
* 表具

本科の課程を修了した者には、金沢市から「金沢匠の技能士」として認定証が授与され、その技能が公的に認められます。

修復専攻科

修復専攻科は3年制の課程で、歴史的建造物を題材に、実践的な修復技術を習得することを目的としています。受講資格は幅広く、本科修了者や本科講師に加え、建築設計士、金沢市職員、教員、そして各関連業種団体からの推薦者などが対象となり、継続的に研修する意欲のある者が受講できます。この専攻科は意欲ある学びを支援するため、学費は無料です。

指導体制も充実しており、経験豊富な講師陣と専属の実習スタッフが、実習課題へのアプローチや具体的な調査方法についてきめ細かく指導を行います。特に、大工や左官、畳といった専門分野の調査実習では、本専攻科の修了者であり、歴史的建造物修復士として活躍する専門家を講師として招き、高度な技術と知識を伝授しています。さらに、実習をサポートするスタッフには修復専攻科の修了者を選抜することで、将来の指導者育成にも積極的な役割を果たしています。

修復専攻科には、現役の職人だけでなく、建築設計士、金沢市の技術職員、大学の若手研究者など、様々な分野の専門家が集まり、共に学び、技術を磨き合っています。この専攻科を修了した者は、金沢市長から「歴史的建造物修復士」として認定され、金沢の貴重な文化財や歴史的建造物の保存修復における重要な担い手として活躍が期待されます。

金沢職人大学校は、これらの多様なプログラムを通じて、古都金沢が誇る伝統技術の保存と発展に寄与し、将来にわたってその価値を継承していくための重要な役割を担っています。

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