金炳植

金炳植の生涯と影響

金炳植（キム・ビョンシク）は1919年に全羅南道新安郡で生まれました。彼は日本統治時代に旧制第二高校を卒業後、1950年代に日本へ移住しました。ここで彼は在日本朝鮮人総聯合会（朝鮮総連）に関わり始め、1959年には組織部長に任命されるなど、急速に昇進します。最終的には第一副議長として、組織の重要な役割を担うこととなります。

彼のキャリアは、1967年の最高人民会議代議員選出を皮切りに、急速に権力を得ることとなりました。金炳植は、当時の議長である韓徳銖の姪婿という立場を活かし、彼と力を合わせて反対勢力を排除することで権力基盤を築きました。1971年には、貴金属貿易を行う「ユニバース・トレイディング」を設立し、北朝鮮に集金や送金を行う事業を行います。この会社は後に多くの問題に巻き込まれることになります。

特に、1973年に起こった「渡辺秀子2児拉致事件」において、ユニバース・トレイディングが関与していたとされ、30名の日本人および在日朝鮮人による証言が報じられるなど、金炳植の名は広く知られることとなります。朝鮮総連の第一副議長としては、日本や韓国の政治家たちとの人脈形成に勤しむ姿が見られます。このため、1971年の大韓民国大統領選挙では金大中に20万ドルの献金を行うなど、外部との関係を強化しました。

彼の権力は拡大しましたが、韓徳銖としばしば対立し、組織内での粛清運動へと進展しました。抵抗勢力に対しては「オルグ団」を送り込み、暴力行為を用いて威圧した結果、多くの脱退者を生むこととなります。1972年、南北赤十字会談のため北朝鮮を訪れた際に、拘束され「反党反革命宗派分子」として失脚します。これにより、金炳植の権力基盤が揺らぎます。

彼はその後、「隠遁生活」を送ることになりますが、一方で対日工作機関の所長として活動していたとも伝えられ、金正日の権力確立に伴い再び台頭します。1993年には衛星政党である朝鮮社会民主党の委員長に就任し、さらに金英柱と共に国家副主席にも任命され、復権を果たしました。これは多くの人々を驚かせました。

1998年には再度最高人民会議代議員に選出されるものの、その後、委員長職を譲り、国家主席制度廃止に伴い副主席も退任します。そして1999年7月21日、金炳植は死去しました。彼の死は、北朝鮮の内部での権力闘争や、彼のこれまでの活動がどのように評価されるかを物語っています。

彼の経歴は、朝鮮総連や北朝鮮内部の複雑な権力関係、対外的な関係構築や経済活動が密接に絡み合ったものであり、その影響力は今もなお語り継がれています。

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