金炳華

金炳華の軌跡

金炳華（キム・ビョンファ）は、北朝鮮の音楽界において重要な役割を果たした指揮者であり政治家です。1936年5月16日に生まれ、2021年3月24日に他界しました。彼の経歴は多彩で、主に1970年から30年以上にわたり、朝鮮民主主義人民共和国国立交響楽団の首席指揮者を務め、北朝鮮の音楽界の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと音楽教育

金炳華は大阪府に生まれ、兵庫県神戸市で育ちました。地元の神戸朝鮮高級学校を卒業後、早くからピアノの才能を開花させ、東京の日本音楽センターで作曲やピアノを学びました。1955年からは東京でピアニストとしての活動を始め、1959年にはバルトークの作品を演奏し、その名を知られるようになりました。

北朝鮮への帰国とキャリアの始まり

1960年6月、金は北朝鮮に帰国し、平壌国立芸術劇場でピアニストとしてのキャリアを築きました。さらに、平壌音楽舞踊大学にて指揮を学び、1962年には功勲芸術家の称号を取得しました。大学卒業後、国立芸術劇場で指揮者としての道を歩み始め、1969年には朝鮮国立交響楽団に入団し、1970年にはその首席指揮者に任命されました。

音楽的業績と貢献

首席指揮者に就任した後、金は数々の北朝鮮の代表的な管弦楽曲を初演しました。これにより、1972年には再び功勲芸術家の称号を授与されました。彼が指揮した作品には、『グネトイは娘』や『わが故郷の懐かしい家』、『青山ヶ原に豊年が来た』などが含まれており、これらは北朝鮮の音楽の中で重要な位置を占めています。

金は1986年には国立交響楽団と共にポーランドを巡回公演し、ユン・イサンの作品を演奏しました。その後、人民芸術家の称号も授与されました。また、1987年にユン・イサンのカンタータ『わが国土、わが民族よ!』を世界初演し、彼の名声はさらに高まりました。

1992年には国立交響楽団とともに日本を訪れ、東京や大阪、神戸で公演を行いました。2000年にはソウルを訪問し、KBS交響楽団との合同演奏も実現しました。

政治家としての側面

金炳華は、音楽活動に留まらず、最高人民会議の代議員にも選出され、その政治的な影響力も持っていました。2005年には金日成メダルを授与され、その功績が評価されました。また、北朝鮮唯一の室内オーケストラである尹伊桑管弦楽団にも客演するなど、精力的な活動を続けました。

最後の頃

2011年に、金は朝鮮国立交響楽団にゲスト指揮者として迎え入れられました。井上道義が訪問した際には、自ら通訳を務めたとされています。2021年には、朝鮮中央通信により金の死去が発表され、金正恩も彼の葬儀に弔花を送るなど、彼の功績が大きな注目を浴びました。

音楽のレパートリー

金炳華のレパートリーは、国威発揚を目的とした作品から、伝統的なクラシック音楽、さらには現代音楽にまで及び、非常に幅広いものです。また、彼は北朝鮮のレコード会社KMCから多数のCDをリリースしています。その活動は、彼の名声をさらに高め、今でも多くの人々に記憶されています。

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