金窪行親

金窪 行親（かなくぼ ゆきちか）

金窪行親は、鎌倉時代前期に活躍した武士であり、北条氏得宗家に仕官していました。特に北条義時や泰時の時代において、彼は侍所所司を務めるなど、幕政における重要な役割を果たしました。

略歴

行親の出身は武蔵国児玉郡金窪（現在の埼玉県上里町金久保）で、彼は安東忠家と共に北条義時の側近として頭角を現しました。『吾妻鏡』に登場する最初の記録は、建仁3年（1203年）の比企能員の変に関連するもので、その際に小御所攻めの一員として「金窪太郎行親」と呼ばれました。

元久元年（1204年）、源頼家が伊豆国修禅寺で暗殺された後、彼の家人たちが謀反の意図を持ったため、行親はこれに対処するための追捕を行いました。その後、建暦3年（1213年）までには兵衛尉に任じられています。同年、泉親衡の乱に関与した和田胤長を安東忠家とともに捕縛し、二階堂行村へ引き渡しました。

和田合戦では、行親は忠家と共に戦死した和田義盛らの首実検や、味方の負傷者の確認を行う役割を果たしました。また、やがて義時が侍所別当に就任すると、行親も侍所所司に任じられ、その職は得宗家の被官者によって独占されることになりました。

行親は、戦功により陸奥国金窪を領有し、この頃から左衛門尉となったと伝えられています。建保6年（1218年）には、鶴岡八幡宮で三浦駒若丸らが引き起こした騒動の鎮圧のために糾明使として派遣されました。建保7年（1219年）には、義時と政子の命により駿河に派遣され、阿野時元を討伐しました。

嘉禄3年（1227年）、承久の乱の際には、遠島にされた後鳥羽上皇の遺児を詐称した者に対して、平盛綱と共に尋問を行っています。義時の死後も行親はその子・泰時に仕え、寛喜2年（1230年）の夜盗侵入事件では、泰時の命令で平盛綱と共に警護を担当しました。この時期には衛府を退き、左衛門大夫として活動していたようです。

延応元年（1239年）には、北条朝時の家人・小見親家が領地を押領した際には泰時の命令を受けてその身柄を預かりました。また、仁治2年（1241年）8月、鶴岡八幡宮での放生会にて、刀が鞘から抜け落ちる事件が発生しました。この際、刀剣の専門家である行親は藤原頼経からこの件についての諮問を受け、「神宝であったためにこのようなことが起こった」と答弁しています。頼経は夢見をきっかけにその発言に心当たりを持ち、その太刀は伊豆山神社に奉納されました。この仁治2年8月11日の日付は行親の最後の記録として『吾妻鏡』に記されています。

行親の生涯は、北条氏の権力と深く関与し、幕政を支えた武士の姿を示しています。彼の業績は、鎌倉時代の歴史において重要な位置を占めています。

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