金英哲

金英哲（キム・ヨンチョル）とは

金英哲（キム・ヨンチョル、김영철、1946年 - ）は、北朝鮮の政治家、軍人です。朝鮮労働党の中枢で重要な役割を担い、党中央委員会政治局員、国務委員会委員、最高人民会議常任委員会委員などを歴任しました。軍人としては、朝鮮人民軍偵察総局長を務め、上将の階級を持っていました。

軍歴と対南工作

両江道出身で、万景台革命学院、金日成軍事総合大学を卒業後、1962年から朝鮮人民軍に所属。1968年のプエブロ号事件では軍事停戦委員会の連絡将校を務めました。1989年以降は、対韓国業務を担当し、南北将官級会談の北朝鮮側代表として活動しました。2009年には、朝鮮人民軍偵察総局の初代総局長に就任し、軍事作戦を統括する立場となりました。

強硬派としての行動

金英哲は、天安沈没事件や延坪島砲撃事件などの国際テロリズムに関与したとされ、アメリカ合衆国や欧州連合諸国など31カ国から制裁を受けています。2013年には、休戦協定の白紙化を宣言し、強硬な外交政策を主導しました。

昇進と降格

2012年に大将に昇進しましたが、その後の大規模検閲で中将に降格されました。しかし、3ヶ月後には大将に復帰しました。この背景には、偵察総局内での勢力争いがあったとされています。2015年には再び上将に降格されました。

対韓国政策担当

2015年末には、金養建の後を継ぎ、対韓国政策を司る党中央委員会書記に就任しました。2016年には党統一戦線部長を兼任し、党内序列も上昇しました。しかし、高圧的な態度から革命化教育を受けたと報じられました。

平昌オリンピックと米朝交渉

2018年の平昌オリンピック閉会式に北朝鮮代表団の一員として出席しましたが、過去の事件に関与したとされ、韓国国内では反発の声が上がりました。その後、金正恩の中国訪問に同行し、米朝首脳会談に向けてアメリカとの交渉にも積極的に関与しました。ニューヨークでのマイク・ポンペオ国務長官との会談や、ドナルド・トランプ大統領への親書手渡しなど、重要な役割を果たしました。

その後の動向

2019年の米朝首脳会談が決裂した後、一時的に粛清されたという報道も流れましたが、実際には要職に留まっていたことが確認されています。その後も国務委員や最高人民会議常任委員会委員を務めましたが、統一戦線部長を解任されたと伝えられています。2021年には、再び党統一戦線部長に選出されましたが、党中央委員会書記の地位からは退きました。

年譜

以下に金英哲の主な経歴を年表形式でまとめます。

1989年2月：少将、人民武力部副局長
1990年9月：南北高位級会談代表
1992年3月：南北高位級会談軍事分科委員会北側委員長
2000年4月：南北首脳会談儀典警護実務接触首席代表
2006年3月：中将、南北将官級軍事会談北側代表
2009年：上将、国防委員会政策室長、朝鮮人民軍偵察総局長
2010年9月：朝鮮労働党中央軍事委員会委員
2012年2月：大将
2012年秋：中将に降格
2013年2月：大将に復帰
2015年4月：上将に降格
2016年1月：朝鮮労働党中央委員会書記（～2016年5月）、同党統一戦線部長（～2019年4月）
2016年5月：朝鮮労働党中央委員会政治局員、同党中央委員会副委員長（～2021年1月）、同党中央軍事委員会委員（～2021年1月）
2016年6月：国務委員会委員
2019年4月：最高人民会議常任委員会委員
2021年1月：党統一戦線部長に再任

金英哲は、北朝鮮の政治・軍事の中枢で重要な役割を担い、強硬な姿勢で知られる人物です。その行動は国際社会から注目されており、今後の動向も注視されるでしょう。

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