金錫源

金錫源（キム・ソグォン）：激動の時代を生きた軍人の生涯

金錫源（キム・ソグォン、김석원、1893年9月29日 - 1978年8月6日）は、大日本帝国陸軍と大韓民国陸軍に身を置いた軍人であり、教育者、政治家としても活動しました。日本名は金山錫源。彼は陸軍士官学校（日本）27期卒業で、最終階級は大日本帝国陸軍では陸軍大佐、韓国陸軍では陸軍少将でした。号は沃田、本貫は慶州金氏。

生い立ちと日本陸軍でのキャリア

金錫源は李氏朝鮮の漢城（現在のソウル）で、官吏の二男として生まれました。大韓帝国の武官学校を経て、1909年に大日本帝国の陸軍中央幼年学校予科に入校。当時、朝鮮人学生は差別を受けましたが、彼は日本人よりも優秀な成績を収め、朝鮮人の気概を示そうとしました。1915年に陸軍士官学校を卒業後、陸軍歩兵少尉に任官。満州事変や日中戦争に出征し、数々の武功を挙げました。

日中戦争では、歩兵第78連隊第3大隊長として北支戦線に従軍。1937年の行宮兵営攻撃では、足首を負傷しながらも部隊を指揮し、占領に成功。1938年の山西省東苑の戦闘では、敵に包囲された際、奇策を用いて部隊を救い、朝鮮人初の功三級金鵄勲章を受章しました。これらの功績から、彼は当時の朝鮮で英雄として称えられました。

1939年に朝鮮へ帰還後は、全国巡回講演を行い、太平洋戦争が勃発すると、朝鮮人青年への学徒動員を呼びかけるなど、積極的に戦争に協力しました。1944年には陸軍大佐に昇進し、終戦時は平壌兵事部課長を務めていました。

大韓民国建国後の活動

1948年に大韓民国が成立すると、金錫源は韓国軍に大佐として入隊し、第1旅団長に任ぜられました。その後、准将、第1師団長と昇進。北朝鮮軍との戦闘で功績を挙げましたが、軍上層部との対立から予備役に編入されました。朝鮮戦争が勃発すると、首都師団長として現役復帰。元日本兵を含む部隊を率い、北朝鮮軍と激戦を繰り広げました。しかし、その後再び解任され、戦時特命検閲部長、陸軍本部付を経て、1956年に少将として予備役編入となりました。

予備役編入後は、かねてからの希望通り、城南高等学校の理事長を務め、教育に尽力。また、国会議員も1期務めました。

死後の評価と論争

金錫源の死後、2002年に「民族の精気を立てる国会議員の集い」が発表した親日派708人名簿と、2005年に民族問題研究所が作成した親日人名辞書収録予定者1次名簿に、長男と共に選定されました。城南高等学校にあった彼の銅像は、親日派認定後に撤去されました。一方で、産経新聞の野口裕之は、朝鮮戦争での戦歴から、彼を韓国にとっての「救国の士」と評しています。

金錫源の生涯は、日本統治時代から朝鮮戦争という激動の時代を背景に、複雑な評価を受けています。彼は軍人として数々の功績を挙げましたが、日本軍に協力した過去は、現代の韓国では親日行為とみなされています。彼の人生は、歴史の複雑さと、個人の選択が時代によってどのように評価されるのかを考えさせられる事例と言えるでしょう。

エピソード

中国軍からは「金錫源部隊と戦うより逃げろ」と言われていた。
晩年、旧日本陸軍将校の親睦団体である偕行社の総会に招かれ、「自分の長男は戦争に参加して戦死した。それは軍人として本望である。本人も満足しているであろう」と挨拶した。

参考資料

秦郁彦 編著『日本陸海軍総合事典』（第2）東京大学出版会、2005年。ISBN 4-13-030135-7。
『朝鮮戦争 (下) (歴史群像シリーズ (61))』学習研究社、1999年。ISBN 4-05-602130-9。
* 金錫源,平田成総『老兵の恨 自叙伝』平田成総、1984年。

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