金開き

金開き：将棋における独特の陣形と戦略

金開きは、将棋の陣形・囲いのひとつであり、中住まい陣形に分類されます。その名の通り、左右の金がそれぞれ離れて配置されるのが特徴です。玉は通常5八に構え、比較的シンプルながらも、様々な戦術に応用できる柔軟性を持ち合わせています。

基本的な配置と展開

金開きの基本的な配置は、先手の場合、左金を7八金、右金を3八金と動かすことで完成します。この配置は、横歩取り青野流において頻繁に現れ、自然な流れから生まれることが多いため、実践的な局面で遭遇する機会も多いでしょう。

対振り飛車戦法における応用

対振り飛車戦法では、金開きはそれほど頻繁には見られませんが、特定の展開において有効な選択肢となります。例えば、後手が△2二飛と飛車を振った場合、先手が9筋を突き進む展開などでは、金開きの陣形が有効に機能します。

この場合、先手は9七角からの攻めを狙うことができ、△2四歩▲同歩△同角の素抜きには▲2七歩で対応できます。△7四歩に対しては▲6六角から5五や4六の角打ち、△9一玉には▲9六飛～▲9七桂～▲8五桂といった攻め筋が考えられます。

また、左銀を前線に繰り出す「滝下流」と呼ばれる金開き戦法も存在します。これは、▲9五同銀から飛車を9六に展開していく戦略で、金開きの狙いと同じく、9筋からの攻めを主眼としています。将棋解説者である今泉健司氏は、この戦法を高く評価しており、アマチュア初段程度の実力者であれば、その狙いを正確に見抜くことは難しいと指摘しています。

様々な局面展開

金開きは、局面に応じて様々な展開へと発展します。例えば、▲7五歩～▲7六銀と進めて、独特の陣形を構築することも可能です。相振り飛車のような局面においても、角道を空けたまま駒組みを進めることができ、▲6六歩から6五歩への攻めや、▲8六飛からの端攻めなどが有効になります。

▲8六飛に△9四歩と端を突かれた場合は、▲9五歩△同歩▲9四歩と進め、△同香であれば▲7六角が効き、△9三銀には▲9二歩が生じます。△8二玉なら▲9一歩成△同玉▲8三飛成と激しい攻め合いとなります。

浮き浮き飛車との関連性

金開きやアヒル囲いへの布石として用いられる「浮き浮き飛車」という戦法もあります。初手▲2六歩から始まるこの戦法は、振り飛車党の後手に対して、▲2五歩△3三角▲2六飛と進めて、相手を嵌めることを目指します。

しかし、後手も△3二飛や△8四歩などの対応策を用意しており、先手は状況に応じて柔軟な対応が必要です。

プロ棋士の評価と実践例

プロ棋士の間でも、金開きに対する評価は様々です。渡辺明九段は、子供の頃に振り飛車党相手にこの戦法を用いていたと語っており、プロで指すなら振り飛車党相手が前提であると述べています。一方、谷川浩司九段は、▲2六飛の飛車浮きは悪手であると評価しています。

プロ棋戦における実践例は少ないものの、森雞二九段が1987年の順位戦A級で青野照市九段に対して採用した例など、いくつかの事例が存在します。しかし、これらの事例では、いずれも後手が敗れていることから、金開きの有効性が示唆されています。

まとめ

金開きは、シンプルながらも奥深い戦略性を秘めた将棋の陣形です。その柔軟性と攻撃性から、様々な局面で有効に活用できる可能性を秘めています。しかし、プロ棋士の評価を見る限り、必ずしも万能な戦法ではなく、使いどころを見極めることが重要です。アマチュア棋士にとっても、金開きの理解は、将棋の幅を広げる上で役立つでしょう。

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